2021年9月育児休業被保険者期間の要件緩和を詳細解説!2022年改正の有期雇用者・出生時育児休業(パパ産休)も!

2021年(令和3年)9月から育児休業給付金の支給にかかる被保険者期間の要件が緩和されました。

「要件緩和」ですので、これまで受給できなかったケースでも受給できることがあります。

今回は、2021年(令和3年)9月1日から施行された被保険者期間の要件緩和を中心に育児休業の給付手続について説明していきます。

また、2022年(令和4年)には、育休取得についての有期雇用者の要件緩和(2022年(令和4年)4月施行)や出生時育児休業(男性版産休)の新設(施行日:2021年(令和3年)6月9日から1年6ヵ月以内の政令で定める日)等が行われます(以下、総称して「2022年(令和4年)改正」と言います)。

この改正のポイント等についても併せて概説していきます。

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1.育児休業給付金の受給手続

まずは、2021年(令和3年)9月からの要件緩和について詳しく説明します。

今回の法改正による緩和により、入社1年程度で産休に入った方が受給対象になることがありますので、特に注意してください。

また、大きな変更はありませんが、受給手続についても概説していきます。

1.1 被保険者期間の要件緩和

育児休業給付金には「育児休業開始日を基準とし、その日より前の2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12ヵ月以上あること」という被保険者期間の要件があります。

女性は産休後に育休を開始するのが一般的で、休業開始日より前の14週間(産前6週間・産後8週間)程度は賃金支払基礎日数(就労日数)が無いことが多く、不利な要件になっていました。

また、出産日の前後により休業開始日が変動するため、出産のタイミングに応じて、受給の可否が変わることもあります。

11日以上の月が12ヵ月ない場合、完全月で賃金支払基礎となった時間数が80時間以上の月を1ヵ月として算定。

これらを解消するために、9月から被保険者期間の要件が次のように緩和されました。

従前の要件に、新たな要件が追加された点がポイントです。

  • ①育休開始日を基準とし、その日より前の2年間に賃金支払基礎日数(就労日数)が11日以上ある完全月が12ヵ月以上
  • ②要件①を満たさない場合は、産前休業開始日等を起算点として、その日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12ヵ月以上
    *産前休業を開始する日前に子を出生した場合は「当該子を出生した日の翌日」、産前休業を開始する日前に当該休業に先行する母性保護のための休業をした場合は「当該先行する休業を開始した日」が基準となります。

<被保険者期間緩和の具体的事例>

被保険者期間緩和の具体的事例

(出典:厚生労働省) 

1.2 育児休業給付の受給要件や内容の概要

育児休業給付を受給するためには、被保険者期間の要件以外にも条件があります。

今回の法改正による変更点はありませんが、確認する意味で概説していきます。

①支給対象者

  • 1歳※1に満たない子を養育するための育休を取得し、雇用保険の一般被保険者であること
  • 被保険者期間の要件※2
  • 期間雇用者の場合は、上記の他に次の2つの要件を満たすこと※3
    (1)休業開始時において、同一の事業主の下で1年以上雇用が継続していること
    (2)子が1歳6ヵ月までの間に雇用契約が満了し、更新されないことが明らかでないこと

※1 保育所に入所できない等の延長事由に該当する場合は1歳6ヵ月又は2歳まで
※2 離職した期間がある場合は、再就職までの期間が1年以内ならば通算されます。但し、離職により基本手当等を受給した場合は通算されません。
※3 後半で説明するように、2022年(令和4年)改正で(1)の要件は撤廃されます。
※4 育休を開始する時点で、育休終了後に離職することが予定されている人は、支給対象になりません。

②支給対象期間

育休の支給対象期間は、以下の図のとおりです。

(出典:厚生労働省

「1歳に達する日」とは1歳の誕生日の前日となり、その前日までの休業が支給対象となります。

育休は「1歳に達する日まで」なので誕生日の前日まで取得可能ですが、給付の対象になるのは「1歳に満たない子を養育するための育休」なので、誕生日の前々日となります。

③支給単位期間毎の要件

休業開始日から起算した1ヵ月毎の期間(支給単位期間)に、次の要件を全て満たしている場合に支給対象となります。

  • (1)支給単位期間の初日から末日まで継続して雇用保険被保険者であること
  • (2)支給単位期間に就業していると認められる日数が10日以下であること
  • (3)支給単位期間に支給された賃金額が、休業開始時の賃金月額の80%未満であること

<支給単位期間の例>

支給単位期間の例

(出典:厚生労働省

※最後の期間が1ヵ月に満たない場合は、(1)と(3)の要件は満たす必要があり、(2)は就業していると認められる日数が10日以下であるとともに、全休業日が1日以上あることが必要です。

④支給額

原則として休業開始時の賃金月額の67%(休業開始6ヵ月開始後は50%)相当額が支給され、詳細は次のようになります。

なお、支給額には上限が定められており、2021年(令和3年)8月以降は、休業開始から6ヵ月(67%)301,902円、その後は225,300円(50%)です。

<各支給単位期間(育児休業を開始した日から起算した1ヵ月ごとの期間)における支給額>

(出典:厚生労働省

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1.3 育児休業給付の受給申請

育児休業給付にかかる受給申請は、最初に受給資格の確認を行い、その後、原則として2ヵ月に1回、支給申請する流れになります(実務上、受給資格の確認と初回の申請を同時にすることが多いです)。

受給資格の確認時に提出する「賃金月額証明書」の記載方法の他に変更点はありませんが、確認の意味で概説します。

①受給資格確認手続き

受給資格の確認手続きの概要は、次のとおりです。

受給資格確認手続き

①届出書類・・・「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(育児)」(以下「賃金月額証明書」という。)
「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」(以下「受給資格確認票」という。)

②提出期限・・・受給資格確認手続のみ行う場合、初回の支給申請を行う日まで。

受給資格の確認と初回支給申請を同時に行う場合には、休業開始日から4ヶ月を経過する日の属する月の末日まで。

③届出先・・・事業所の所在地を管轄するハローワーク

④持参するもの・・・
(1)受給資格の確認手続のみを行う場合
・育児を行っている事実、書類の記載内容が確認できる書類(母子健康手帳など)
(2)初回申請も同時に行う場合(1)の書類および
・賃金台帳、賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、労働者名簿、雇用契約書など

※受給資格確認票は、マイナンバーを記載して提出してください。

(出典:厚生労働省

被保険者期間の要件緩和により、届出書類の1つである「賃金月額証明書」の記載方法が一部変更になります。

賃金月額証明書は、育休開始日より前の2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12ヵ月以上あることを証明する書類で、基準日を休業開始日から離職日に置き換えれば離職票とほぼ同じ記載内容になります。

被保険者期間の要件緩和により、休業開始の他に産前休業開始日を用いることが可能になったことから、その場合には、賃金月額証明書の「④休業を開始した日の年月日」及び「⑦休業等を開始した日の前日に離職したとみなした場合の被保険者期間算定対象期間」の欄に「産前休業開始日」を記入することとされました。

それ以外の記入方法に変更はありません。

②支給申請

支給申請の概要は、次のとおりです。

支給申請

①届出書類・・・「育児休業給付金支給申請書」(以下「支給申請書」という。)

②提出期限・・・支給対象期間の初日から起算して4ヶ月を経過する日の属する月の末日まで
「次回支給申請日指定通知書(事業主通知書」)に印字されています。)

③届出先・・・事業所の所在地を管轄するハローワーク

④持参するもの・・・
・賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、労働者名簿、雇用契約書など

(出典:厚生労働省

初回の申請は休業開始日から4ヵ月を経過する日の属する月の末日までに行い、2回目からは、原則として2ヵ月に1回支給申請します。

給付金の振込も2ヵ月毎になります。

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2.2022年(令和4年)改正の概要

2022年4月1日に施行された「育児休業取得についての有期雇用者の要件緩和」において、追加要件、緩和要件、法改正後の変化について簡単に解説していきます。

2.1 育児休業取得についての有期雇用者の要件緩和(2022年(令和4年)4月施行)

本記事前半で説明したように、有期雇用者が育休取得するためには、通常の要件に加えて次の2つの要件を満たす必要があります。

  • (1)休業開始時において、同一の事業主の下で1年以上雇用が継続していること
  • (2)子が1歳6ヵ月までの間に雇用契約が満了し、更新されないことが明らかでないこと

しかし、2022年(令和4年)4月から、上記要件(1)が廃止され、有期雇用者も「子が1歳6ヵ月までの間に雇用契約が満了し、更新されないことが明らかでない」限りは、正社員等の無期雇用者と同等の条件で育児休業を取得できるようになります。

一方、次のいずれかに該当する者を労使協定により、対象から除外することができますが、この点について変更はありません。

  • 雇用された期間が1年未満の者
  • 休業申出日から「1年以内」に雇用関係が終了することが明らかな者(1歳6ヵ月及び2歳までの休業の場合「6ヵ月以内」)
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の者

従って、労使協定で「雇用された期間が1年未満の者」を対象外としている会社は、今回の法改正による影響はありません。

2.2 育児休業の分割取得(施行日:2021年(令和3年)6月9日から1年6ヵ月以内の政令で定める日)

育児休業の新設及び分割取得については、以下のとおりです。

①出生時育児休業(パパ産休/男性版産休)の新設

子の出生後8週間以内に、父親が最大4週間まで休業することができる出生時育休制度(パパ産休)が新設されます。

産後8週間と言えば、母親は産後休業中ですが、その間の父親の育児参加を促す趣旨です。

出生時育休制度(パパ産休)の概要は、次のとおりです。

  • 出生後8週間以内の期間内であれば、4週間以内で2回に分割して育休取得が可能(現状は、原則不可)
  • 2週間前までの申請で取得可能(現状は通常1ヵ月前まで)
  • 労使協定を締結している場合は、従業員が同意した範囲内で休業中の就労も可能(現状は、通常不可)

次に説明する育休の分割取得と合わせれば、男性は4回に分けて育休を取得することができるようになります。これに伴い、現行のパパ休暇は廃止されます。

②育児休業の分割取得

出生時育休制度(男性版産休/パパ産休)等の場合を除いて、育休を分割取得することはできませんでしたが、今回の法改正により、2回に分割して取得することが可能になります。

育児休業の分割取得の概要は、次のとおりです。

  • 1歳までの育休について、分割して2回まで取得が可能
  • 1歳6ヵ月及び2歳までの延長について、育休開始日を柔軟にすることで各期間の途中でも取得が可能

これらにより、次のようなイメージでの働き方が可能になります。

<制度改正により実現できる働き方・休み方(イメージ)>

制度改正による育児休業分割取得のイメージ

(出典:厚生労働省

 

3.まとめ

育児休業は、2021年(令和3年)と2022年(令和4年)にかけて、順次改正法が施行されました。

これらの法改正に伴い、随時、育児介護休業規程や労使協定の見直し、社内書式の整備等していく必要があります。

また、これらの制度変更により育休の取得の仕方も複雑になることが予想され、社会保険料の免除や育児休業給付金等、出産・育児に関連する人事労務の業務負担も大きくなることが見込まれます。

女性従業員が多い会社等は、これを機会に、社会保険労務士事務所等へのアウトソーシングを検討してみてはどうでしょうか。

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