Q7:経営の状況が悪化したので、内々定を取り消しても良いですか?
A:内々定者の期待権を侵害する状況にあるか否かで判断されます。
採用内定の内容は、企業ごとに異なるため、一概に定義することは難しいですが、一般的には以下のように認識されています。
採用内定によって、「①就労開始は学生の卒業後の一定時期(主に4月)という「始期付き」の、②内定後、就労開始までの間に、内定通知書に記載された事由に該当するときは解約することがあるという「解約権留保付き」の、労働契約が成立している」(最判昭54・7・20 大日本印刷事件)と解されています。
つまり、通常、採用内定を取り消すことは、条件付きとはいえ、すでに成立した労働契約を使用者側から取り消すことになるため、「解雇」に該当することになります。「解雇」に該当するということは、労働契約法第16条「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」に該当し、正社員を解雇する場合と同様に、解雇が相当であるという客観的、合理的な理由を必要とするということになります。
しかし、内々定の場合は内定と違って、法的に定められているものではないため、通常、法的効果を生じるような確定的な約束がなされるわけではなく、取消によって、取り消しを行った者が何らかの法的責任を負わなければならないということにはならないと考えられています。但し、内定式の日程を通知し、「内定」がおこなわれることは確実であるといった状況等があった後に、「内々定」を取り消した場合は、内々定者の期待権を侵害するものとして、損害賠償の責任が生じる場合もありますので、注意してください。