近年ビジネスシーンで注目されている取り組みの1つが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。
DXには、業務の効率化やコスト削減、従業員の満足度向上等の様々な効果が期待されており、人事労務業務においても注目を集めています。
しかし、人事労務業務のDX化について、具体的にイメージできない人もいるかと思います。そもそも、DXについて詳しく知らないという方もいるでしょう。
そこで今回は、人事労務業務におけるDX化について、具体的な事例を交えて解説していきます。
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1. そもそもDXとは
DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略であり、ITを活用した生活やビジネスの変革を指します。
企業においてDX化を担う人材を、一般的に「DX人材」と呼びます。
元々、DXはウメオ大学(スウェーデン)のエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した考え方であり、日本では2018年(平成30年)に経済産業省が公表した「DX推進ガイドライン」をきっかけに広がり始めました。
近年はテレワークが浸透していることから、ビジネス面での活用に対して特に注目が集まっており、人事労務も例外ではありません。
人事労務には、採用や教育、労務管理等「ヒト」に関わる多種多様な業務があるため、組織全体に大きな影響を与えます。従業員が働きやすい環境を整え、パフォーマンスを最大限に高めるうえで、人事労務のDX化は重要です。
1-1. 中小企業においてDX化の必要性が大きくなっている
株式会社リクルートの「DXに関する人事担当者調査」では、2021年度(令和3年度)における「DX人材確保の必要状況」について、全国の人事担当者に調査しています。
調査結果を見ると、「必要である」が41.6%と、2020年度(令和2年度)の26.2%から大きく上昇しており、DX化の必要性に対する認識が広がっている現状です。
DX化は、組織規模が大きく、予算的にも余裕がある大企業が実施するものだと考えられている傾向があります。
しかし、企業としての伸びしろが大きい中小企業こそ、中長期的な成長を踏まえて、早いうちにDX化を検討することが重要です。DX化が遅れるほど、他社との差が広がってしまう可能性もあります。
実際に、先述したリクルートの調査においても、従業員規模30~99人の企業では、2020年度(令和2年度)と比べてDX人材の必要性が高くなっている傾向です。
<「DX人材」確保の必要状況(企業規模別)|DXに関する人事担当者調査>
(出典:株式会社リクルート)
従業員規模30~99人の企業では、「DX人材の確保が必要」と回答した割合が、2020年度(令和2年度)と比べて19.6%も増加しています。
従業員規模5~29人の企業は、他の従業員規模と比べて「必要である」と答えた割合が少ないように見えますが、それでも12.0%の増加です。
従業員規模5~29人の企業で数値が小さい理由としては、アナログの方法でも業務が行き届くことで、必要性を実感していないケースが多いためと考えられます。
現在従業員が少ない企業も、今後組織が大きくなるにつれて、DX化の必要性が増す可能性は十分にあるでしょう。
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2. 中小企業における人事労務業務のDX化事例
人事労務は、豊富なデータを取り扱ううえに定型的な業務が多いため、DX化しやすい業務のひとつです。
特に、業務を自動化できるツールを導入する方法が一般的であり、従業員情報の管理や採用、勤怠管理等、幅広い業務においてDX化が可能です。
しかし「人事労務業務はDX化しやすい」といっても、どのようにDX化を進めたら良いか分からない人事労務担当者も多いのではないでしょうか。
そこでここからは、中小企業が人事労務業務をDX化した事例をご紹介していきます。
2-1. 書類の電子化:株式会社シンフィールドの事例
マンガマーケティング事業を行っている株式会社シンフィールドは、給与明細の電子化をきっかけに、幅広い管理業務のDX化を検討し始めました。
最終的には、人事労務の定型業務を自動化できるシステムを導入し、入社手続きや従業員情報の管理等、紙ベースで行っていた業務全般を電子化しています。
書類を電子化したことで、2名体制で手一杯だった管理部門の業務に余裕が生まれ、採用関連等の戦略的な業務を、管理部門に任せられるようになりました。
また、クラウド上にデータが一元管理されているため、担当者の変更やテレワークへの移行等、様々な場面で連携がスムーズになっています。
2-2. 採用活動のDX化:コネヒト株式会社の事例
コネヒト株式会社では、採用管理システムの導入により、採用活動におけるPDCAの円滑化と、選考プロセスの改善を図りました。
具体的な取り組みとしては、システムを用いて選考プロセスごとの通過率と応募状況を定量的に分析したうえで、新入社員にもヒアリングを実施。
その結果、1次・2次面接が内定承諾に大きく影響していることが明らかになりました。
結果を基に選考プロセスを改善し、内定承諾率の向上と辞退者の大幅減少に成功しています。
2-3. 勤怠管理のDX化:株式会社レスタスの事例
株式会社レスタスでは、勤怠管理システムを導入し、勤怠データ管理の効率化に成功しています。
レスタスでは、元々アナログでシフトを管理しており、勤怠データの締めも行えていませんでした。
勤怠管理システムを導入後は、従業員はパソコンから、アルバイトはスマホから簡単に打刻できるようになりました。
勤怠データは自動的に集計されるため、勤怠管理にかかる労力が大幅に激減しています。簡単な操作で出退勤を行えるようになったことで、従業員の満足度も向上したようです。
2-4. 人事評価制度のDX化:三陽建設株式会社の事例
滋賀県甲賀市に本社を構える三陽建設株式会社では、人事評価制度が機能しておらず、従業員が成長を実感できない環境になっていました。
そこで、従業員の能力を可視化できるタレントマネジメントシステムを活用し、人事評価制度のDX化を図りました。
具体的な取り組みとしては、システム内の評価ワークフロー機能を使い、「年間目標チャレンジシート」「月間マネジメントシート」「日々の習慣シート」「マインド評価シート」を作成。シートを活用した360度評価を行い、一人ひとりが成長を実感ながら、能力や個性を活かして働ける環境を整えました。
DX化の結果、成長過程を可視化できるようになり、各従業員におけるセルフマネジメントの質が向上したようです。
月間マネジメントシートを用いて、各月の目標と到達度合いを客観視できるようになり、上司の恣意的な評価もなくなりました。
必要な情報はすべて自動集計されるため、労力を大幅に削減できた点にもメリットを感じています。
2-5. 「単なるツールの導入」にならないよう注意が必要
DX化は、ITを用いて業務の在り方を根本的に変えることであるため、単なるツールの導入にならないよう注意してください。
人事労務業務は、基本的に「ヒト」に関わるものです。そのため、人事労務業務のDX化は、人事部だけでなく全従業員に影響を与え、組織全体の業務効率化や生産性向上につながります。
逆に言うと、安易にツールを導入すれば、手間が増えるだけでかえって組織全体を混乱させてしまうかもしれません。
まずは、自社の課題を踏まえて、DX化の目的や対象とする業務を明確にすることが重要です。そのうえで、DX化を成功させるために必要なツールや、取り組みを入念に検討する必要があります。
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3. まとめ
DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略であり、ITによる生活やビジネスの変革のことです。近年は各業務でDX化が進められており、人事労務業務も例外ではありません。
組織の根幹を担う人事労務が業務のDX化に成功すれば、企業全体の生産性向上につながります。企業競争が激しくなっている近年、中小企業のDX化は、他社の先を行くために大きな助けとなります。
但し、安易にDX化を図れば、かえって組織全体を混乱させることになるため、事例等を参考にしながらの慎重な導入が重要です。
ぜひ、本記事の内容を参考に、自社における人事労務業務のDX化を検討してください。
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