知らなかったはNG!【簡単解説】初めての労務管理(安全衛生、健康管理編)

2019年10月16日

労働者が安心して安全に働くことができ、事業活動を円滑に行っていくためには、労働基準法を中心とする労働関係法令の内容を正しく理解し、遵守していくことが重要です。

労働関係法令というと難しく感じますが、初心者にも分かりやすいように、今回は労働関係法令のうち、「安全衛生、健康管理」に関する内容をまとめました(出典:厚生労働省)。

1.安全衛生と健康管理について

労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と衛生を確保し、快適な職場環境の形成を促進することを目的としています。

労働安全衛生法では、労働災害や健康障害を防ぐために、以下のことが定められています。

  1. 国が労働災害防止計画を立て、
  2. 事業者は、
    (ⅰ)自主的に労働災害を防止するために安全衛生管理体制を整え、
    (ⅱ)危険な機械や有害物には防護措置を講じ、
    (ⅲ)必要な教育・講習を実施し、
    (ⅳ)作業環境の改善や健康診断の実施を通じて健康の保持・増進に努め、
    (ⅴ)作業環境の管理、作業方法の改善、施設・設備の設置・整備等を通じて快適な職場を形成すべき

 

2.健康診断の実施

企業(事業主、使用者)は、必ず健康診断を実施する義務があります。

労働者は企業(事業主、使用者)の指定する医師の健康診断を希望しないときは、自己の希望する医師の健康診断を受けなければならず、その結果を企業(事業主、使用者)に報告しなければなりません。

健康診断は、①労働者の雇入れの際 ②1年以内ごとに1回(有害な業務や深夜業等に従事する労働者については6ヵ月ごとに1回)定期的に実施しなければならないものです。

健康診断(一般)の実施の対象

  • 常時使用する労働者
    (「常時使用する労働者」とは、次のいずれの要件をも満たす者で、パートタイム労働者等についても要件を満たす場合は対象)
    ① 期間の定めのない労働契約により使用される者
    (期間の定めのある労働契約により使用される者であって、契約期間が1年以上である者、契約更新により1年以上使用されることが予定されている、1年以上引き続き使用されている者を含む。)
    ② 1週間の所定労働時間が、同じ事業所において同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上である者

企業(事業主、使用者)は、健康診断等の結果、異常の所見があると診断された労働者の就業上の措置について、医師または歯科医師の意見を聴かなければなりません。

加えて、企業(事業主、使用者)は、その医師等の意見を勘案し、必要がある場合は、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずる必要があります。

また、企業(事業主、使用者)は、健康診断の結果を労働者に通知しなければならず、健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると医師等が認める労働者に対し、医師等による保健指導を行うように努めなければなりません。

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3.メンタルヘルス対策~ストレスチェック

メンタルヘルス対策のひとつとして、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的に、2014年(平成26年)6月に労働安全衛生法が改正され、2015年(平成27年)12月1日から、労働者50人以上の事業場に対し、1年以内ごとに1回、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握する検査(ストレスチェック)を実施すること等が義務化されました(労働者50 人未満の事業場は当分の間は努力義務)。

企業(事業主、使用者)は、ストレスチェックの結果、高ストレス者であって、ストレスチェックの実施者から「面接指導が必要」とされた労働者から申し出があった場合、医師による面接指導を実施し、医師の意見を勘案して必要な場合は、以下の適切な措置を講じなければなりません。

  •  就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少
  • その他の就業上の措置

ストレスチェックの対象者は、一般健康診断の実施の対象と同じ、「常時使用する労働者」です。

なお、1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3未満である労働者であっても、「常時使用する労働者」の①の要件を満たし、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上である者に対しても、ストレスチェックを実施することが望まれます。

また、企業(事業主、使用者)は、ストレスチェックを行った医師等に、その結果について一定規模の集団ごとの集計・分析を行ってもらうよう努め、職場環境の改善のために活用することが必要です。

集団ごとの集計・分析の手法としては、国が公開している「仕事のストレス判定図」があります。

この判定図を用いた場合、部・課・グループなどの分析対象集団がどの程度健康リスクがあるのかを判定することができます。その結果を踏まえ、企業(事業主、使用者)は産業医と連携しつつ、各職場における業務の改善、管理監督者向け研修の実施、衛生委員会における具体的な活用方法の検討などに活用することができます。

<参考:仕事のストレス判定図>

出典:厚生労働省

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4.職場のハラスメント対策

4.1 職場のパワーハラスメント対策

職場のいじめ・嫌がらせが増加傾向にある現状を踏まえ、「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」において、2012年(平成24年3月に「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」等が取りまとめられました。

「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」では、「職場のパワーハラスメント」について、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義し、職場のパワーハラスメントに当たり得る典型的な事例を次の6つの類型に整理しています。

  • ①身体的な攻撃(暴行・傷害)
  • ②精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
  • ③人間関係からの切り離し(隔離・仲間はずし・無視)
  • ④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
  • ⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
  • ⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

また、パワーハラスメントを予防・解決するために、次の7つの取組を行うことを求めています。

  • ①企業トップからのメッセージの発信
  • ②社内ルールの作成
  • ③従業員アンケート等による実態把握
  • ④研修の実施 ⑤会社の方針の社内周知
  • ⑥相談窓口の設置
  • ⑦再発防止の取組

職場のパワハラ6類型と企業が行うべきパワハラ対策4つのポイント

 

4.2 職場のセクシュアルハラスメント対策

職場におけるセクシュアルハラスメントには、職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により、以下の2つに分類されます。

  • 当該労働者がその労働条件につき不利益を受けるもの(対価型セクシュアルハラスメント)
  • 当該性的な言動により労働者の就業環境が害されるもの(環境型セクシュアルハラスメント)

企業(事業主、使用者)には、以下に掲げるセクシュアルハラスメントを防止するための措置を講じることが義務付けられています(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「男女雇用機会均等法」という)第11条)

  • ① 企業(事業主、使用者)の方針の明確化及びその周知・啓発
  • ② 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  • ③ 職場におけるセクシュアルハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応
  • ④ ①~③までの措置と併せて講ずべき措置

セクハラ|対価型?環境型?セクシュアルハラスメント発言・定義・事例・対策を簡単解説!

 

4.3 職場の妊娠、出産、育児休業等に対するハラスメント対策

職場における妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメントには、上司又は同僚から行われる以下のものがあります。なお、業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動によるものについては、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントには該当しません。

  • その雇用する女性労働者の産前休業その他の妊娠又は出産に関する制度又は措置の利用に関する言動及びその雇用する労働者の育児休業等に関する制度又は措置の利用に関する言動により就業環境が害されるもの(制度等の利用への嫌がらせ型)
  • その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したことその他の妊娠又は出産に関する言動により就業環境が害されるもの(状態への嫌がらせ型)

企業(事業主、使用者)には、以下に掲げる妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメントを防止するための措置を講じることが義務付けられています(男女雇用機会均等法第11条の2、育児・介護休業法第25条)

  1. 企業(事業主、使用者)の方針の明確化及びその周知・啓発
  2. 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. 職場における妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応
  4. 職場における妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
  5. 1~4までの措置と併せて講ずべき措置

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5.過労死等防止対策

5.1 過労死

長時間にわたる過重な労働によって、疲労の蓄積が生じ、その結果、脳・心臓疾患を発症することがあります。

疲労の蓄積をもたらす要因の一つである労働時間に着目すると、労働時間が長いほど、脳・心臓疾患のリスクが高まることが明らかになっています。また、長時間労働に従事することは、精神障害の発病の原因となり得ます。これらを原因とする死亡、または死亡には至らないこれらの疾病が「過労死等」です。

<時間外・休日労働時間と健康障害リスクの関係>

出典:厚生労働省

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知らなかったはNG!【簡単解説】初めての労務管理(労働契約・就業規則・社会保険・年金編)

5.2 労災認定の状況

2018年度(平成30年度)の脳・心臓疾患に係る労災認定件数は、238件で2年連続で減少しましたが、依然多い状態が続いています。

業種別では道路貨物運送業が、職種別では自動車運転従事者が、それぞれ最も多く、年齢別では50~59歳が多くなっています。

<脳・心臓疾患の請求、決定及び支給決定件数の推移>

出典:厚生労働省

また、2018年度(平成30年度)の精神障害に係る労災認定件数は、465件で、平成24年度以降は 400 件台で推移しています。

業種別では道路貨物運送業、医療業、社会保険・社会福祉・介護事業に多く、職種別では一般事務従事者が最も多く、年齢別には40~49歳に多く、脳・心臓疾患に比べ若い年齢層に多くなっています。

<精神障害の請求、決定及び支給決定件数の推移>

出典:厚生労働省

 

5.3 過労死等の防止のために

過労死等の防止のための対策を推進し、過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与することを目的として、2014年(平成26年)6月に「過労死等防止対策推進法」が成立し、同年11月に施行されました。

また、この法律に基づき、対策を効果的に推進するため、2015年(平成27年)7月に「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が閣議決定されました。

過労死等の防止のためには、企業(事業主、使用者)・労働者ともに、自身にも関わることとして過労死等に対する理解を深めるとともに、過労死等を防止することの重要性について自覚することがとても大切です。

 

6.まとめ

安全衛生と健康管理は、労働者が働く上で、土台となる重要なものです。

労働者が安心して安全に働く環境の整備は、企業に求められる基本的なことですので、しっかり押さえておきましょう。

 

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