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みなし労働時間制|「事業場外みなし労働時間制」と「裁量労働制のみなし労働時間」の違いとは?

2019年11月12日

もともと労働時間法制は工場などで集団的に働く労働者を念頭に置いて設定されたものですが、脱工業化・グローバル化の進展の中で、時代の変化による多様な働き方に対応するために変化してきました。

その中で、新しい多様な働き方に対応するため、「事業場外みなし労働時間制」や「裁量労働制」が生まれ、多くの企業が適用しています。

しかし、「みなし労働時間」と言ってもいくつか種類がありますので、今回は「みなし労働時間制」について、簡単に解説していきます。

1.みなし労働時間制とは

よく混同されがちですが、「みなし労働時間制」には、「裁量労働制」と「事業場外みなし労働時間制」の2種類があります。

それぞれの種類について、詳しく解説していきます。

 

2.事業場外みなし労働時間制

事業場外みなし労働時間制とは、「事業場外(会社の外)で労働する場合で、会社(事業主、使用者)の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間の算定が困難な場合の制度」を言います。

営業での外回りや出張が多い労働者など、労働時間を正確に把握することが難しい労働者に適用することができます。

前述のとおり、会社の指揮監督下(時間配分が決められている、細かい指示に基づいて働いている等)にいる場合には、事業場外みなし労働時間制を適用することはできません。

原則として、所定労働時間労働したものとみなします。

事業場外みなし労働時間制においては、原則として「所定労働時間労働したものとみなす」とされていますが、「通常所定労働時間を超えて労働することが必要な場合」には、労使協定によって、「通常必要とされる時間」を定め、労働基準監督署長に届け出ることが必要です。

 

みなしパターン 労使協定 時間外労働手当
所定労働時間
労働したとみなす場合
不要 不要
通常必要とされる時間
労働したとみなす場合
必要 労使協定にて設定した
みなし時間による

 

2.1 事業場外労働の範囲

事業場外(会社の外)で労働する場合であっても、会社(事業主、使用者)の具体的な指揮監督が及んでいる場合は、事業外みなし労働時間制の適用はありません(昭63.1.1基発1号、婦発1号)。

  • ① グループで事業場外労働に従事し、その中に労働時間を管理する者がいる場合
  • ② 無線やポケットベル等によって、随時、使用者の指示を受けながら労働している場合
  • ③ 事業場において、訪問先、帰社時刻等の指示を受けたのち、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合

 

2.2 休憩、深夜業、休日の取り扱い

事業外みなし労働時間制を適用した場合であっても、休憩、深夜業、休日に関する労働基準法の規定は、適用されます。

 

2.3 事業場外労働における労働時間の算定方法

事業場外労働における労働時間の算定方法は、みなしパターンによって異なりますので、注意が必要です。

  • 所定労働時間労働したものとみなす場合(原則)
    労働時間の全部又は一部について事業場外(会社の外)で働いた場合で、労働時間を算定するのが難しいときは、所定労働時間労働したものとみなされます。
  • 通常所定労働時間を超えて働くことが必要な場合(通常必要とされる時間)
    通常必要とされる時間労働したものとみなされ、労働時間の一部について事業場内で業務に従事した場合には、当該通常必要とされる時間又は労使協定で定めた時間労働したものとみなされます。

 

2.4 労使協定

労使協定は、事業場外で業務に従事する部分について協定します。

  • 常態として行われている事業場外労働であって労働時間の算定が困難な場合には、できる限り労使協定を結ぶことが望まれるとされています。
  • 業務の遂行に必要とされる時間は、一定の期間ごとに見直すことが適当であるため、労使協定には有効期間の定めが必要です。

 

2.4.1 事業場外労働に関するみなし労働時間制の労使協定例

事業場外労働に関するみなし労働時間制の労使協定例

株式会社○○と○○労働組合は、事業場外労働をさせる場合の労働時間の算定に関して、次のとおり協定する。

  1. 適用対象者
    営業部に所属する社員で、主として事業場外で営業業務に従事する者とする。
  2. 労働時間の取扱い
    労働時間の全部又は一部を事業場外において業務に従事し、労働時間を算定し難い日については、所定労働時間を超えて1時間労働したものとみなし、その日のみなし労働時間は9時間とする。但し、電話連絡等により、業務の状況を会社に通知した場合は、実働時間による。
  3. 深夜又は休日における勤務は、通常の勤務者と同様、賃金規程第○条の割増賃金を支給する。
  4. 協定の有効期間

令和○○年4月1日から令和○○年3月31日までの1年間とする。

令和○○年○月○日

株式会社○○代表取締役 ○○ ○○ ㊞
○○労働組合執行委員長 ○○ ○○ ㊞

 

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3.裁量労働制

裁量労働制とは、業務の性質上、その遂行手段や時間の配分などに関して会社(事業主、使用者)が具体的な指示をせず、「実際の労働時間とは関わりなく、労使の合意で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度」を言います。

裁量労働制には、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。

裁量労働の労働時間の算定に関する労使協定を締結し、所定の様式により、労働基準監督署長に届け出る必要があります。

なお、裁量労働制の「みなし労働時間」の規定は、労働基準法に定める年少者、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性(本人から請求があった場合に限る。)には適用されないことにも注意が必要です。

 

3.1 専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制を採用する場合の要件は、以下のとおりです。

 

3.1.1 対象業務

専門業務型裁量労働制の対象業務は、以下の19業務となります。

1 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
2 情報処理システムの分析又は設計の業務
3 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務、放送番組の制作のための取材若しくは編集の業務
4 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
5 放送番組、映画等制作事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
6 コピーライターの業務
7 システムコンサルタントの業務
8 インテリアコーディネーターの業務
9 ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
10 証券アナリストの業務
11 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
12 大学での教授研究の業務
13 公認会計士の業務
14 弁護士の業務
15 建築士の業務
16 不動産鑑定士の業務
17 弁理士の業務
18 税理士の業務
19 中小企業診断士の業務

 

3.1.2 導入要件

導入する事業場ごとに、次の事項を労使協定により定めた上で、労働基準監督署長に届け出ることが必要です。

 

3.1.3 労使協定で定める事項

  1. 制度の対象とする業務
  2. 対象となる業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしない旨
  3. 労働時間としてみなす時間
  4. 対象労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
  5. 対象労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容
  6. 協定の有効期間(※3年以内とすることが望ましいとされています)
  7. 4及び5に関し労働者ごとに講じた措置の記録を協定の有効期間及びその期間満了後3年間保存すること

 

3.1.4 専門業務型裁量労働制の労使協定例

参考までに、事業場外労働に関するみなし労働時間制の労使協定例を記載します。

専門業務型裁量労働制の労使協定例

株式会社○○と○○労働組合は、専門業務型裁量労働に関し、次のとおり協定する。

  1. 1 適用対象者
    ○○研究所で研究業務に従事する者とする。
  2. 労働時間の取扱い
    所定労働日に勤務した場合には、8時間勤務したものとみなす。
  3. 深夜労働・休日出勤
    (1) 業務の都合で、やむを得ず深夜又は休日に労働する場合は、事前に所属長の許可を得るものとし、その勤務時間はみなし労働には含めない。
    (2) 深夜又は休日における勤務は、通常の勤務者と同様、賃金規程○条の割増賃金を支給する。
  4. 協定の有効期間

令和○年4月1日から令和○年3月31日までの1年間とする。

令和○○年○月○日

株式会社○○取締役労務部長 ○○ ○○ ㊞
○○労働組合執行委員長 ○○ ○○ ㊞

 

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3.2 企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制を採用する場合の要件は、以下のとおりです。

 

3.2.1 対象業務

  1. 事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務
  2. 業務遂行の方法、時間配分などについて労働者に具体的な指示をしない業務

 

3.2.2 導入要件

  1. 労使委員会を設置すること
  2. 労使委員会の委員の5分の4以上の多数による決議

実際に制度を適用するには対象となる労働者の個別同意が必要です。

 

3.2.3 労使委員会での必要的決議事項

企画業務型裁量労働制を採用する場合は、以下の決議を労働基準監督署長に届け出ることが必要です。

  • 対象業務の範囲
  • 対象労働者の範囲
  • みなし労働時間
  • 対象労働者の勤務状況に応じた健康・福祉確保のための措置
  • 対象労働者からの苦情処理に関する措置
  • 労働者からの同意の取得及び不同意者の不利益取扱いの禁止
  • 決議の有効期間(3年以内とすることが望ましいとされています)
  • 実施状況に係る労働者ごとの記録を保存すること

 

3.2.4 労使委員会の要件

  1. 委員の半数は、過半数労働組合又は労働者の過半数を代表する者に任期を定めて指名されていること
  2. 委員会議事録の作成、保存、労働者への周知が図られていること
  3. 1及び2のほか、労使委員会の招集、定足数、議事その他労使委員会の運営について必要な事項に関する規定が定められていること

 

3.2.5 実施状況報告

会社(事業主、使用者)は、定期的に、労働時間の状況に応じた労働者の健康及び福祉を確保するための措置の実施状況、その他命令で定める事項を、労働基準監督署長に報告することが必要です。

 

ポイント

  • 数人でプロジェクトチームを組んで開発業務を行っている場合、そのプロジェクトマネージャーの管理下で業務遂行、時間配分を行っているときは裁量労働に該当しません。
  • 裁量労働のみなし労働時間制に関する規定が適用される場合でも、休憩、深夜業、休日に関する法規定の適用は排除されません。

 

4.まとめ

今回は、みなし労働時間制について解説してきましたが、「みなし労働時間」という言葉がひとり歩きして、「事業場外みなし労働時間制」や「裁量労働制」を悪用して、残業代を支払わない企業もまだ存在するようです。

労働者より未払賃金を請求された場合は、過去2年間に遡って支払わなければならないなど、後々の労務問題となりますので、今のうちに改めて整備し直していくことをお勧めします。

 

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