働き方改革 労務

年収1,075万円以上!高度プロフェッショナル制度の対象者・対象職種・年収・休日要件とは?

2019年11月5日

2019年4月1日、「働き方改革関連法」の制定により、「高度プロフェッショナル制度」が新設されました。

日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要だと言われています。

新しい働き方である「高度プロフェッショナル制度」とはどういう制度なのか、年収要件とは何か、どんな人やどんな業務が対象なのかについて、わかりやすくまとめました。

今回は「高度プロフェッショナル制度」について、解説していきます。

1.高度プロフェッショナル制度

「高度プロフェッショナル制度」とは、高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象として、労使委員会の決議及び労働者本人の同意を前提として、年間104日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講ずることにより、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度です。

 

1.1 「高プロ」対象労働者

  • 使用者との間の合意※1に基づき職務が明確に定められている※2こと
  • 使用者から確実に支払われると見込まれる1年間当たりの賃金の額が少なくとも基準年間平均給与額の3倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上(=1,075万円以上※3であること
  • 対象労働者は、対象業務に常態として従事していることが原則であり、対象業務以外の業務にも常態として従事している者は対象労働者とはならないこと

※1【使用者との合意の方法】とは

会社(事業主、使用者)は、次の①~③の内容を明らかにした書面に労働者の署名を受けることにより、職務の範囲について労働者の合意を得なければなりません。

  • ①業務の内容
  • ②責任の程度
  • ③求められる成果

 

※2【職務が明確に定められていること】とは

「高度プロフェッショナル制度」の活用に当たっては、職務内容等について、以下の要件を満たしている必要があります。

  • 業務の内容、責任の程度及び職務において求められる成果その他の職務を遂行するに当たって求められる水準が具体的に定められており、対象労働者の職務の内容とそれ以外の職務の内容との区別が客観的になされていること
  • 業務の内容が具体的に定められており、使用者の一方的な指示により業務を追加することができないこと
  • 働き方の裁量を失わせるような業務量や成果を求めるものではないこと

なお、職務の内容を変更する場合には再度合意を得ることが必要であり、その場合であっても職務の内容の変更は対象業務の範囲内に限られます。

 

※3【基準年間平均給与額の3倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること(=1,075万円以上であること)】とは

「高度プロフェッショナル制度」年収要件の留意点は、次のとおりです。

  • 個別の労働契約又は就業規則等において、名称の如何にかかわらず、あらかじめ具体的な額をもって支払われることが約束され、支払われることが確実に見込まれる賃金であること
  • 労働者の勤務成績、成果等に応じて支払われる賞与や業績給等、その支給額があらかじめ確定されていない賃金は含まれないこと
  • 賞与や業績給において支払われることが確実に見込まれる最低保障額が定められている場合には、その最低保障額は含まれること
  • 一定の具体的な額をもって支払うことが約束されている手当は含まれるが、支給額が減少し得る手当は含まれないこと

(例)通勤手当の場合、通勤距離等にかかわらず一定額が一律に支給されるものは含まれます。

年収要件の1,075万円以上を満たしている場合であっても、毎月の賃金の支払い方(特定の月に偏って多額の賃金が支払われ、他の月の賃金額が極めて少額となる場合等)によっては、最低賃金法に抵触する可能性があります。

【最低賃金の計算方法】
月によって定められた賃金の場合には、その月の賃金の額をその月の健康管理時間で除して得た額が、その事業場が所在する都道府県の最低賃金額以上となる必要があります。

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1.2 「高プロ」対象業務

「高度プロフェッショナル制度」の対象業務は、下記の「具体的な対象業務(労働基準法第41条の2第1項第1号)」に該当する業務で、かつ以下の要件を満たす業務とされています。

 

1.2.1 対象業務の要件

「高度プロフェッショナル制度」の対象となる業務は、対象業務に従事する時間に関し使用者から具体的な指示を受けて行うものは含まれません。

具体的な指示とは

「具体的な指示」とは、労働者から対象業務に従事する時間に関する裁量を失わせるような指示を言います。これには、業務量に比して著しく短い期限の設定その他の実質的に当該業務に従事する時間に関する指示と認められるものも含まれます。

また、対象業務は働く時間帯の選択や時間配分について自らが決定できる広範な裁量が労働者に認められている業務でなければなりません。実質的に業務に従事する時間に関する指示と認められる指示についても、「具体的な指示」に含まれます。

具体的指示としては、次のようなものが考えられます。

  • ①出勤時間の指定等始業・終業時間や深夜・休日労働等労働時間に関する業務命令や指示
  • ②対象労働者の働く時間帯の選択や時間配分に関する裁量を失わせるような成果・業務量の要求や納期・期限の設定
  • ③特定の日時を指定して会議に出席することを一方的に義務付けること
  • ④作業工程、作業手順等の日々のスケジュールに関する指示

なお、使用者が対象労働者に対し業務の開始時に当該業務の目的、目標、期限等の基本的事項を指示することや、中途において経過の報告を受けつつこれらの基本的事項について所要の変更の指示をすることは可能です。

また、対象となる業務は、部署が所掌する業務全体ではなく、対象となる労働者に従事させることとする業務とされています。従って、対象業務の語句(例えば、「研究」、「開発」)に対応する語句をその名称に含む部署(例えば、「研究開発部」)において行われる業務の全てが対象業務に該当するものではなく、対象労働者が従事する業務で判断します。

会社(事業主、使用者)は、時間に関し具体的な指示を行わないことをもって、安全配慮義務を免れるものではないことにも注意が必要です。

 

1.2.2 具体的な対象業務

業務1.金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務

金融取引のリスクを減らしてより効率的に利益を得るため、金融工学のほか、統計学、数学、経済学等の知識をもって確率モデル等の作成、更新を行い、これによるシミュレーションの実施、その結果の検証等の技法を駆使した新たな金融商品の開発の業務を言います。

対象となり得る業務の例

  • 資産運用会社における新興国企業の株式を中心とする富裕層向け商品(ファンド)の開発の業務

対象とならない業務の例

  • 金融商品の販売、提供又は運用に関する企画立案又は構築の業務
  • 保険商品又は共済の開発に際してアクチュアリーが通常行う業務
  • 商品名の変更や既存の商品の組合せのみをもって行う金融商品の開発の業務
  • 専らデータの入力又は整理を行う業務

 

業務2.資産運用(指図を含む。以下同じ。)の業務又は有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断に基づく資産運用の業務、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務又は投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務

金融知識等を活用した自らの投資判断に基づく資産運用の業務又は有価証券の売買その他の取引の業務を言います。

対象となり得る業務の例

  • 資産運用会社等における投資判断に基づく資産運用の業務(いわゆるファンドマネージャーの業務)
  • 資産運用会社等における投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務(いわゆるトレーダーの業務)
  • 証券会社等における投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務(いわゆるディーラーの業務)

対象とならない業務の例

  • 有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断を伴わない顧客からの注文の取次の業務
  • ファンドマネージャー、トレーダー、ディーラーの指示を受けて行う業務
  • 金融機関における窓口業務
  • 個人顧客に対する預金、保険、投資信託等の販売・勧誘の業務
  • 市場が開いている時間は市場に張り付くよう使用者から指示され、実際に張り付いていなければならない業務
  • 使用者から指示された取引額・取引量を処理するためには取引を継続し続けなければならない業務
  • 金融以外の事業を営む会社における自社資産の管理、運用の業務

 

業務3.有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務

有価証券等に関する高度の専門知識と分析技術を応用して分析し、当該分析の結果を踏まえて評価を行い、これら自らの分析又は評価結果に基づいて運用担当者等に対し有価証券の投資に関する助言を行う業務を言います。

対象となり得る業務の例

  • 特定の業界の中長期的な企業価値予測について調査分析を行い、その結果に基づき、推奨銘柄について投資判断に資するレポートを作成する業務

対象とならない業務の例

  • 一定の時間を設定して行う相談業務
  • 専ら分析のためのデータ入力又は整理を行う業務

 

業務4.顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務

企業の事業運営についての調査又は分析を行い、企業に対して事業・業務の再編、人事等社内制度の改革など経営戦略に直結する業務改革案等を提案し 、その実現に向けてアドバイスや支援をしていく業務を言います。

対象となり得る業務の例

  • コンサルティング会社において行う顧客の海外事業展開に関する戦略企画の考案の業務

対象とならない業務の例

  • 調査又は分析のみを行う業務
  • 調査又は分析を行わず、助言のみを行う業務
  • 専ら時間配分を顧客の都合に合わせざるを得ない相談業務
  • 個人顧客を対象とする助言の業務
  • 商品・サービスの営業・販売として行う業務
  • 上席の指示やシフトに拘束され、働く時間帯の選択や時間配分に裁量が認められない形態でチームのメンバーとして行う業務
  • サプライヤーが代理店に対して行う助言又は指導の業務

 

業務5.新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務

新たな技術の研究開発、新たな技術を導入して行う管理方法の構築、新素材や新型モデル・サービスの研究開発等の業務を言い、専門的、科学的な知識、技術を有する者によって、新たな知見を得ること又は技術的改善を通じて新たな価値を生み出すことを目的として行われるものを言います。

対象となり得る業務の例

  • メーカーにおいて行う要素技術の研究の業務
  • 製薬企業において行う新薬の上市に向けた承認申請のための候補物質の探索や合成、絞り込みの業務
  • 既存の技術等を組み合わせて応用することによって新たな価値を生み出す研究開発の業務
  • 特許等の取得につながり得る研究開発の業務

対象とならない業務の例

  • 作業工程、作業手順等の日々のスケジュールが使用者からの指示により定められ、そのスケジュールに従わなければならない業務
  • 既存の商品やサービスにとどまり、技術的改善を伴わない業務
  • 既存の技術等の単なる組合せにとどまり、新たな価値を生み出すものではない業務
  • 他社のシステムの単なる導入にとどまり、導入に当たり自らの研究開発による技術的改善を伴わない業務
  • 専門的、科学的な知識、技術がなくても行い得る既存の生産工程の維持・改善の業務
  • 完成品の検査や品質管理を行う業務
  • 研究開発に関する権利取得に係る事務のみを行う業務
  • 生産工程に従事する者に対する既知の技術の指導の業務
  • 上席の研究員の指示に基づく実験材料の調達や実験準備の業務

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2.高度プロフェッショナル制度の導入の流れ

厚生労働省が推奨する「高度プロフェッショナル制度」導入の流れをご紹介します。参考にしてください。

 

Step.1 労使委員会を設置する

まずは、労使委員会を設置することから始めます。労使委員会の要件は、次のとおりです。

  • 労働者代表委員が半数を占めていること
  • 委員会の議事録が作成され、保存されるとともに、事業場の労働者に周知が図られていること 等

 

Step.2 労使委員会で決議をする

決議の要件

  • 労使委員の5分の4以上の多数による決議

 

決議すべき事項

  • ①対象業務
  • ②対象労働者の範囲
  • ③対象労働者の健康管理時間を把握すること及びその把握方法
  • ④対象労働者に年間104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を与えること
  • ⑤対象労働者の選択的措置
  • ⑥対象労働者の健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置
  • ⑦対象労働者の同意の撤回に関する手続
  • ⑧対象労働者の苦情処理措置を実施すること及びその具体的内容
  • ⑨同意をしなかった労働者に不利益な取扱いをしてはならないこと
  • ⑩その他厚生労働省令で定める事項(決議の有効期間等)

 

Step.3 決議を労働基準監督署長に届け出る

Step.2で決定した決議内容を、所管の労働基準監督署長に届け出る必要があります。

 

Step.4 書面で対象労働者の同意を得る

会社(事業主、使用者)は、次の①~③の内容を明らかにした書面に労働者の署名を受けることにより、労働者の同意を得なければなりません。

  • ①同意をした場合には労働基準法第4章の規定が適用されないこととなる旨
  • ②同意の対象となる期間
  • ③同意の対象となる期間中に支払われると見込まれる賃金の額

注意

高度プロフェッショナル制度の対象労働者には、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定が適用されないことに注意が必要です。

 

Step.5 対象労働者を対象業務に就かせる

「高度プロフェッショナル制度」の運用にあたり、次の5つの項目が必要になります。

  • ①対象労働者の健康管理時間を把握すること
  • ②対象労働者に休日を与えること
  • ③対象労働者の選択的措置及び健康・福祉確保措置を実施すること
  • ④対象労働者の苦情処理措置を実施すること
  • ⑤同意をしなかった労働者に不利益な取扱いをしないこと 等

なお、会社(事業主、使用者)は、Step.2の決議から6ヵ月以内毎に、上記①②③の状況を所管の労働基準監督署長に報告しなければなりません。

注意

対象労働者は、同意の対象となる期間中に同意を撤回することができます。

 

Step.6 決議の有効期間の満了

さらに継続する場合は、Step.2から再度繰り返します。

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3.高度プロフェッショナル制度の対象労働者の健康確保措置

会社(事業主、使用者)は、高度プロフェッショナル制度の対象労働者に対して、次の措置を実施しなければなりません。

  • ①健康管理時間の把握
  • ②休日の確保
  • ③選択的措置
  • ④健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置

 

3.1 ①健康管理時間の把握

健康管理時間(事業場内にいた時間+事業場外で労働した時間)をタイムカードやパソコンの使用時間等により客観的に把握しなければなりません。
(労働基準法第41条の2第1項第3号関係)

 

3.2 ②休日の確保

年間104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を与えなければなりません。
(労働基準法第41条の2第1項第4号関係)

 

3.3 ③選択的措置

次のいずれかに該当する措置を決議で定め、実施しなければなりません。
(労働基準法第41条の2第1項第5号関係)

  • 1. 勤務間インターバルの確保 (11時間以上)※1 + 深夜業の回数制限(1ヵ月に4回以内)
    ※1 始業から24時間を経過するまでに11時間以上の継続した休息時間を確保しなければなりません。
  • 2. 健康管理時間の上限措置(1週間当たり40時間を超えた時間について、1ヵ月について100時間以内又は3か月について240時間以内とすること)
  • 3. 1年に1回以上の連続2週間の休日を与えること(本人が請求した場合は連続1週間×2回以上)
  • 4. 臨時の健康診断(1週間当たり40時間を超えた健康管理時間が1ヵ月当たり80時間を超えた労働者又は申出があった労働者が対象)

 

3.4 ④健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置

次の措置のうちから決議で定め、実施しなければなりません。
(労働基準法第41条の2第1項第6号関係)

  • 1. 「③選択的措置」のいずれかの措置(上記③において決議で定めたもの以外)
  • 2. 医師による面接指導 ※2
    ※2 この他にも、1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合におけるその超えた時間が1ヵ月当たり100時間を超えた対象労働者については、労働安全衛生法に基づき、本人の申し出なしに、医師による面接指導を行わなければなりません。
  • 3. 代償休日又は特別な休暇の付与
  • 4. 心とからだの健康問題についての相談窓口の設置
  • 5. 適切な部署への配置転換
  • 6. 産業医等による助言指導又は保健指導

 

4.まとめ

「高度プロフェッショナル制度」を利用するにあたっては、対象者の要件や業務内容、休日等の規定がありますので、法律の要件に留意しながら進めていくことが重要です。

自社にフィットするかどうか、慎重に検討しながら導入の可否を決めていくのが、より良い選択ではないかと思います。

 

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