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残業代の基礎知識|時間外・休日・深夜残業の割増率は?月60時間超で割増率50%!中小企業2023年4月1日~適用

2019年10月30日

残業代の未払いは「ブラック企業」として企業のイメージを悪化させてしまう恐れがありますし、給与や残業代に関する問題は、たとえ軽微な間違いであったとしても従業員との信頼関係を失う要因となってしまうこともありますので、人事労務担当者としては慎重な取り扱いが必要です。

今回は、労働基準法の労働規制、割増賃金の種類と割増率などについて、簡単に解説していきます。

1.労働基準法の労働規制

労働基準法では、1日8時間、週40時間を法定労働時間と定められています。(但し、商業、映画・演劇業(映画製作の事業を除く)、保健衛生業及び接客娯楽業であって、常時使用する労働者が10人未満の事業場は、特例として週法定労働時間を44時間と定められています。)

労働基準法第32条

第32条(労働時間)

1. 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
2. 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

会社(事業主・使用者)は、労働者の過半数で組織する労働組合(労働者の過半数を代表する者)と労使協定(36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出た場合は、法定労働時間を超えて労働させることができます(これを「時間外労働」と言います)。

この「時間外労働」には上限が定められており、原則として1ヵ月45時間、1年360時間を超えないものとしなければなりません。

 

1.1 「1週間」とは

労働基準法第32条(労働時間)の「1週間」とは、7日間の開始日と終了日をどのように区切っても良いということではありません。

基本的には就業規則において、「1週間とは月曜日から日曜日とする」「週の始まりは月曜日とする」などと定めれば足ります。

就業規則において特段の定めがない場合には、暦週(日曜日から土曜日)で区切るのが行政の解釈となります(昭63.1.1 基発1号)。

 

1.2 「1日」とは

「1日」とは、「午前0時から午後12時までのいわゆる暦日をいう」との行政解釈が出されています(昭63.1.1 基発1号)。

従って、1日のうち1時間でも労働した場合は「休日」とはならず、「休日出勤」扱いとなります。

また、継続勤務が日付を超えて2暦日(2日間)にわたる場合、たとえ暦日をまたいで労働した場合でも継続勤務=1勤務として取り扱い、その勤務は始業時刻の属する日の労働として労働時間がカウントされます。

例えば午後8時から翌朝6時までの業務では、暦日で分けずに、始業時刻の属する日の労働として取り扱うため、10時間労働となります。

 

1.3 「休日」とは

会社(事業主・使用者)と労働者との労働契約において、労働義務がない日を「休日」と言います。

労働基準法第35条では、企業(事業主・使用者)は毎週少なくとも1回の休日、または、4週間を通じて4日の休日を与えなければならないと定められています。

労働基準法第35条

第35条(休日)

1. 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。
2. 前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。

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2.割増賃金の種類と割増率

会社(事業主・使用者)が労働者に「時間外労働」をさせる場合、割増賃金の支払が必要になり、割増賃金は3種類あります。

労働基準法第37条

第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)

1. 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
2. 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
3. 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第1項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第39条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。
4. 使用者が、午後10時から午前5時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後11時から午前6時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
5. 第1項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

 

2.1 時間外(時間外手当・残業手当)

  • ① 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき:割増率25%以上
  • ② 時間外労働が限度時間(1ヵ月45時間・1年360時間等)を超えたとき:割増率25%以上 ※1
  • ③ 時間外労働が1ヵ月60時間を超えたとき:割増率50%以上 ※2

※1 25%を超える率とするよう努めることが必要です。
※2 中小企業は、2023年4月1日から適用となります。大企業は適用済。

  • 1時間当たりの賃金 × 1.25以上 × 超過労働時間(①②)
  • 1時間当たりの賃金 × 1.50以上 × 超過労働時間(③)

 

2.2 休日(休日手当)

  • 法定休日に(週1回)に勤務させたとき:割増率35%以上

ポイント

所定休日(法定外休日)に勤務させたときは、その週の労働時間が40時間(特例事業場は44時間)を超えた場合、割増賃金25%以上の支払いが必要です。

つまり、休日労働としての割増賃金ではなく、時間外労働としての割増賃金として扱われます。

  • 1時間当たりの賃金 × 1.35以上 × 法定休日労働時間
  • 1時間当たりの賃金 × 1.25以上 × 超過労働時間(法定外休日)

 

2.3 深夜(深夜手当)

  • 22時から翌5時までの間に勤務させたとき:割増率25%以上

ポイント

残業時間を把握する必要のない労働者(=いわゆる管理職(管理監督者))の場合は、深夜割増手当の部分のみの支給となります。

  • 1時間当たりの賃金 × 1.25以上 × 深夜労働時間
  • 1時間あたりの賃金 × 0.25以上 × 深夜労働時間(管理職(管理監督者)の場合)

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2.4 時間外労働の割増率の考え方

所定労働時間が9:00~17:00(1日8時間)の場合の時間外労働の割増率の事例を説明します。

 

例1:所定労働時間が午前9時から午後5時(休憩1時間)までの場合

出典:東京労働局

17:00~18:00 ⇒ 1時間あたりの賃金×1.00×1時間・・・法定時間内残業
18:00~22:00 ⇒ 1時間あたりの賃金×1.25×4時間・・・法定時間外残業
22:00~  5:00 ⇒ 1時間あたりの賃金×1.50(1.25+0.25)×7時間・・・法定時間外残業+深夜労働

 

例2:午前9時から午後12時(休憩1時間)まで労働した場合

出典:東京労働局

9:00~22:00 ⇒ 1時間あたりの賃金×1.35×12時間・・・法定休日労働
22:00~24:00 ⇒ 1時間あたりの賃金×1.60(1.35+0.25)×2時間・・・法定休日労働+深夜労働

 

2.5 管理職(管理監督者)の割増賃金

管理職(管理監督者)の地位にある従業員に対しては、時間外手当、休日手当を支払う必要はありません。

ここでいう「管理職(管理監督者)」とは、「労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とされ、「部長」「所長」「店長」といった肩書ではなく、実体により判断されます。

その他には、「地位に応じた相応の賃金が支払われている」といった待遇面での優遇、「部下の採用、給与の決定など人事管理の権限を持つ」こと、「出退勤時間が本人の裁量に任されている」などといった立場と権限がある必要があります。

但し、「深夜手当」については、管理職(管理監督者)に対しても支払う必要がありますので、注意が必要です。一般の従業員と異なり、時間給については支給しないため、割増分25%のみ支払えば足ります。

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2.6 振替休日と代休

業務の都合により、振替休日や代休を使用する場合、これらの意味の違いを理解しておく必要があります。

割増賃金計算にも関わってきますので、明確に区別しておく必要があります。

振替休日

法定休日を他の勤務日とあらかじめ交換して労働させ、事前または事後に休日を与えた場合を言います。
休日と勤務日を交換しているため、休日労働には該当しません(休日手当は不要)。

振替休日

勤務日の振替(交換)を行わずに法定休日に労働させ、事後に代休を与えた場合を言います。

法定休日に労働しているため、休日労働に該当します(休日手当は必要)。

 

3.まとめ

働き方改革関連法により、中小企業も2023年4月1日より「月60時間超の残業割増賃金率」が25%から50%に引き上げられます。

計算ミスや対応の遅れにより、割増賃金が適切に支払われない場合は「賃金不払い」となってしまう可能性がありますので、今のうちから慎重な対応が求めまれます。

また、「名ばかり管理職」問題もありますので、管理職(管理監督者)の権限などについても、改めて確認しておく必要がありますので、しっかり押さえておきましょう。

 

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