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改正労働基準法|時間外労働時間・法定休日労働時間の上限規制、36協定指針を分かりやすく解説

2019年11月29日

2019年4月に施行された改正労働基準法の「時間外労働時間の上限規制」。

時間外労働の上限だけでなく、休日労働も含んだ1ヵ月あたりの労働時間、及び複数月の平均労働時間数にも上限が設けられました。このため、企業においては、これまでとは異なる方法での労働時間管理が必要となります。

今回は、いよいよ中小企業の適用時期が迫ってきた「時間外労働時間の上限規制」について分かりやすく解説していきます。

1.時間外労働時間の上限規制(改正労働基準法)

改正労働基準法により、時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができなくなりました。

また、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項を定めた場合)でも、次の2つの上限を遵守しなければなりません(改正労働基準法第35条5項)。

上限規制の適用時期

  • 大企業:2019年4月~
  • 中小企業:2020年4月~

 

Point1. 特別条項で定めることができる時間外労働の上限(改正労働基準法第36条5項)

事業場において「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い、臨時的に特別条項の限度時間を超えて労働させる」必要がある場合、次の制限を受けることになります。

  • 時間外労働時間は、1年720時間以内
  • 時間外労働時間法定休日労働時間の合計が、1ヵ月100時間未満
  • 36協定対象期間の時間外労働時間1ヵ月45時間、1年360時間(36協定対象期間が3ヵ月を超える1年単位の変形労働時間制の場合には1ヵ月42時間、1年320時間)を超えることができるのは、1年で6ヵ月が限度

万一、違反した場合には、罰則(6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります(労働基準法第119条1号)。

<時間外労働時間上限規制のイメージ>

(出典:厚生労働省)

 

Point2. 特別条項とは別に制限される労働時間の上限(改正労働基準法第36条6項)

企業(使用者)は、36協定(サブロク協定)で定めるところによって労働時間を延長して労働させ、または法定休日において労働させる場合であっても、次の要件を満たすものとしなければなりません。

  • 時間外労働時間法定休日労働時間の合計が1ヵ月100時間未満
  • 時間外労働時間と法定休日労働時間の合計の「2ヵ月平均」「3ヵ月平均」「4ヵ月平均」「5ヵ月平均」「6ヵ月平均」がすべて1ヵ月80時間以内

万一、違反した場合には、罰則(6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります(労働基準法第119条1号)。

<2~6ヵ月平均80時間以内のイメージ>

(出典:労政時報)

 

ポイント

※ 例えば、時間外労働が45時間以内に収まって特別条項には当てはまらない場合であっても、「時間外労働=44時間、休日労働=56時間」のように労働時間の合計が月100時間以上になると労働基準法違反となりますので、区分して管理していくことが重要です。

 

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2.法定休日労働の時間数・上限の取り扱い

労働基準法第35条では、「使用者は労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない」と規定されています。

例えば、週休2日制を採用している会社の場合、所定休日とする土曜日・日曜日のうち、日曜日を「法定休日」と定めているのであれば、日曜日の休日労働時間は法定休日労働となります。

労働基準法の改正前・改正後では、この「法定休日」を労働時間にカウントする取り扱いが変っていますので、注意が必要です。

法改正前

改正前の労働基準法上においては、「法定休日労働」は時間外労働に加算されず、36協定(サブロク協定)に定める労働させることができる休日として「1ヵ月に4回」などの回数、当該休日の労働時間の始業及び終業時間定めれば足り、労働時間の上限を定める規定は存在しませんでした。

法改正後

法改正により、1ヵ月100時間未満とする労働時間の上限規制、及び2~6ヵ月の平均80時間以内とする労働時間の上限規制が追加され、時間外労働と法定休日労働を合計した実際の労働時間に対する上限が追加されました(改正労働基準法第36条6項)。

つまり、法定休日労働の日数・時間数の上限は従来のままですが、別の角度から労働時間の上限に関するチェックが入ることになったということです。

36協定指針においても、休日の労働を定めるにあたっての留意事項として、労使当事者は労働させることができる休日の日数をできる限り少なくし、及び休日に労働させる時間をできる限り短くするように努めなければならないとされています(36協定指針第7条)。

 

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3.36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針

36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針(以下「36協定指針」という)について、解説していきます。

労働基準法の改正に合わせて、時間外労働及び休日労働を適正なものとすることを目的として、36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関して、新たに指針が策定されました。労使当事者間での36協定の締結にあたっては、この指針の内容に留意しなければなりません。

 

CHECK1. 労使当事者の責務等(36協定指針第2条、第7条)

時間外労働・休日労働は必要最小限に留められるべきものであり、時間外労働・休日労働の日数をできる限り少なくし、休日労働の時間数をできる限り短くするように努めなければならない。労使がこのことを十分意識したうえで、36協定を締結する必要があります。

 

CHECK2. 会社(使用者)の責務等(36協定指針第3条)

会社(使用者)は、36協定の範囲内であっても労働者に対する安全配慮義務(労働契約法第5条)を負うことに留意しなければなりません。

また、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」(平成13年12月12日付け基発第1063号厚生労働省労働基準局長通達)において、1週間当たり40時間を超える労働時間が月45時間を超えて長くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が徐々に強まるとされていること、さらに、1週間当たり40時間を超える労働時間が月100時間又は2~6ヵ月平均で80時間を超える場合には、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いとされていることにも留意しなければなりません。

 

CHECK3. 業務区分の細分化(36協定指針第4条)

労使当事者は、36協定において時間外労働・休日労働を行うことができる業務の区分を細分化し、業務の範囲を明確にしなければなりません。

例えば、各種の製造工程において、それぞれ労働時間管理を独立して行っているにもかかわらず、「製造業務」とまとめているような場合は、細分化は不十分となります。

 

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CHECK4. 特別条項における留意事項(36協定指針第5条)

原則として、臨時的な特別の事情がなければ、限度時間(月45時間・年360時間)を超えることはできません。

また、限度時間を超えて労働させることができる場合を36協定において定める(=特別条項)にあたっては、通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合をできる限り具体的に定めなければなりません。

この場合にも、時間外労働は、限度時間にできる限り近づけるように努める必要があり、「業務の都合上必要な場合」「業務上やむを得ない場合」など恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものは認められません。

時間外労働は原則として限度時間を超えないものとされていることに十分留意し、限度時間を超える場合でも、①1ヵ月の時間外労働及び休日労働の時間、②1年の時間外労働時間を限度時間にできる限り近づけるように努め、③限度時間を超える時間外労働については、25%を超える割増賃金率とするように努めなければなりません。

ポイント

限度時間を超えて労働させる場合、月末2週間に80時間、翌月初2週間に80時間、合わせて連続した4週間に160時間の時間外労働を行わせるなど、短期に集中して時間外労働を行わせることは望ましくありません。

 

CHECK5. 短期間労働者の時間外労働時間の目安(36協定指針第6条)

1ヵ月未満の短期間で労働する労働者の時間外労働は、次の目安時間を超えないように努めなければなりません。

目安時間

  • 1週間:15時間
  • 2週間:27時間
  • 4週間:43時間

 

CHECK6. 健康福祉快歩措置(36協定指針第8条)

労使当事者は、限度時間を超えて労働させる労働者の健康・福祉を確保するための措置について、次の中から協定することが望ましいことに留意しなければなりません。

  1. 医師による面接指導
  2. 深夜業(22時~5時)の回数制限
  3. 終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
  4. 代償休日・特別な休暇の付与
  5. 健康診断
  6. 連続休暇の取得
  7. 心とからだの相談窓口の設置
  8. 配置転換
  9. 産業医等による助言・指導や保健指導

 

CHECK7. 適用除外・適用猶予(指針第9条、附則第3項)

労使当事者は、限度時間が適用除外とされている事業・業務についてはも、限度時間を勘案し、月45時間・年360時間を超えて時間外労働を行う場合には、CHECK7. の健康・福祉を確保するための措置を協定するよう努めなければなりません。

また、限度時間が適用猶予されている事業・業務については、猶予期間において限度時間を勘案することが望ましいことに留意しなければなりません。

36協定指針に適合しない36協定について、例えば、36協定を適用する業務の区分が細分化されていないなど、法定要件をみたしているものの、指針に適合しない36協定は直ちに無効とはなりません。但し、36協定指針に適合しない36協定は、改正労働基準法第36条9項の規定に基づく助言及び指導の対象となります(解釈通達 第2 答9)。

 

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上限規制の適用が猶予・除外となる事業・業務とは

次の事業・業務については、上限規制の適用が5年間猶予されます。

ポイント

新技術・新商品等の研究開発業務については、上限規制の適用が除外されています。

なお、労働基準法の改正に伴い労働安全衛生法が改正され、新技術・新商品等の研究開発業務については、 1週間当たり40時間を超えて労働した時間が月100時間を超えた労働者に対しては、医師の面接指導が罰則付きで義務付けられました。

会社(使用者・事業者)は、面接指導を行った医師の意見を勘案し、必要があるときには就業場所の変更や職務内容の変更、有給休暇の付与などの措置を講じなければなりません。

 

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4.まとめ

時間外労働時間の上限規制、中小企業は2020年4月~適用となり、期限が迫ってきています。

上限規制に違反した場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が科されるおそれもあるため、労働時間の管理方法を再構築し直し、漏れのないようにチェックしていくことが企業に求められています。

趣旨を理解したうえで、適切に進めていきましょう。

 

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