働き方改革 労務

努力義務化された勤務間インターバル制度とは?就業規則、休息時間設定、適用除外、罰則などをチェック!

2019年9月6日

2018年6月29日に成立した「働き方改革関連法」に基づき改正された「労働時間等設定改善法」により、「勤務間インターバル」が事業主(会社)の努力義務として規定され、2019年4月1日に施行されました。

労働者が十分な生活時間や睡眠時間を確保でき、ワーク・ライフ・バランスを保ちながら働き続けることができるようになるものとして、今後の動向が注目されています。

今回は、「勤務間インターバル制度」の詳細について、解説していきたいと思います。

 

1.勤務間インターバルとは

「勤務間インターバル」とは、前日の終業時刻から翌日の始業時刻の間に一定時間の休息を確保することを言います。

勤務終了後に一定時間以上の「休息時間」を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保する趣旨で改正されました。この仕組みの導入を事業主(企業)の努力義務とすることで、労働者の十分な生活時間や睡眠時間を十分に確保しようとするものです。

例えば、深夜遅くまで働いた場合は次の日の始業時間は繰り下げる、翌日早朝から仕事をする場合は前日の勤務終了時間を早めに切り上げるなど、勤務と勤務の間に一定の「休息時間」を設ける、などが該当します。

 

出典:厚生労働省:「勤務間インターバル」サイト

 

勤務間インターバル制度を導入している企業でのこれまでの事例として、以下の2パターンをご紹介します。どちらも休息時間(インターバル時間)を11時間としていますが、「勤務したものとみなす時間を設定する」か、「次の日の始業時間を繰り下げる」かで運用に違いがあります。

 

<勤務したものとみなす時間を設定する場合>

注:厚生労働省「勤務間インターバル制度普及促進のための有識者検討会報告書」に記載された企業において、勤務したものとみなした時間に賃金控除を行っている事例はなかった。

 

<次の日の始業時刻を繰り下げる場合>

注:フレックスタイム制が適用される労働者については、その清算期間内において労働時間を調整している例もある。

出典:厚生労働省

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2.勤務間インターバル制度導入のメリット

では次に、勤務間インターバル制度のメリットについて見ていきたいと思います。主に3つのメリットがあると考えられています。

 

メリット1:健康維持に向けた睡眠時間の確保

いくつもの研究結果から、睡眠時間と健康には密接な関係があるとされています。以下の研究結果などにより、勤務間インターバル制度の導入は、健康維持に向けた睡眠時間の確保という課題の解決に対する一助になると考えられています。

米国での研究結果

米国での実験では、被験者を1晩の睡眠時間が4時間、6時間、8時間のグループに分け、14日間、実験室に宿泊させて反応検査を行います。同時に3日間徹夜させるグループにも同じような反応時間検査を行います。

この反応検査は、ランダムに提示される刺激に対して、0.5秒以上かかって反応した遅延反応数を解析して、グループごとの経日変化を観察します。下図は、横軸が実験日、縦軸が反応検査で0.5秒以上かかった遅延反応数を示しています。

結果として、毎日4時間の睡眠場合、その状態が6日間継続しただけで、1晩徹夜したのと同じくらいの遅延反応が生じており、10日以上続くと2番徹夜したのと同等レベルの遅延反応が生じています。また、毎日6時間の睡眠の場合でも10日以上その状態が連続すると、1晩徹夜したのと同等以上の遅延反応が生じる結果が出ています。

この実験結果からいえることは、毎日少しずつでも睡眠不足が続くと、負債が積み重なるように疲労が慢性化していき、やがて、徹夜したのと同じ状態になってしまうということです。すると判断能力や反応が鈍くなり、当然、仕事にも支障をきたすことになります。だから、毎日しっかりと睡眠時間をとることが必要だということが言えます。

(出典:厚生労働省:勤務間インターバル制度導入事例集より抜粋)

その他、睡眠が健康に与える影響に関する研究結果については、以下の事例も参考にしてください。

参考

  • 日本における研究では、交通事故を起こした運転者で、夜間睡眠が6時間未満の場合に追突事故や自損事故の頻度が高いことが示されている。
  • ある介入研究では、夜間睡眠を1日当たり約 5.8 時間に制限すると、制限せずに 8.6 時間眠らせた場合に比べて眠気が増し、注意力が低下することが示されている。
  • 朝8時から持続的に1日以上徹夜で覚醒させた介入研究では、認知・精神運動作業能力は、夜中の3時(17 時間覚醒)で血中のアルコール濃度が 0.05%(日本では、0.03%以上で酒気帯び運転)の時と同程度に低下し、翌朝8時(24時間覚醒)にはさらに血中アルコール濃度 0.1%(およそビール大瓶1本飲用に相当)の時と同程度に低下することが示されている。
  • 「睡眠と労働生活の向上」(高橋正也(2016))で引用されているノルウェーの看護師を対象とした横断研究によると、シフト間隔が 11 時間未満となる回数が多くなるにつれて、不眠、強い眠気、過労の訴えが増加することが示されている。
  • 「平成 29 年「国民健康・栄養調査」の結果」(厚生労働省)によれば、1日の平均睡眠時間が6時間未満の割合は、男女とも40歳代で最も高いこと、睡眠で休養が十分にとれていない者の割合は 20.2%であり、平成21年からの推移でみると有意に増加し、年齢階級別にみると40歳代で最も高く、30.9%であることから、40歳代で睡眠の状況に課題がある。

(出典:厚生労働省:「勤務間インターバル制度普及促進のための有識者検討会」報告書)

 

メリット2:生活時間の確保によりワーク・ライフ・バランスの実現

勤務間インターバル制度を導入することにより、家族や友人などとの充実した時間、趣味を楽しむ時間、自己啓発や地域活動へ参加する時間など、一定の生活時間が確保され、ワーク・ライフ・バランスの実現につながると考えられています。

これまでの企業の取り組みは、有給休暇の取得推進・長時間労働の改善などを中心に行われてきました。そこに勤務間インターバル制度の取り組みをプラスすることで、さらに仕事のオン・オフの切り替えによる生活のメリハリが生まれ、プライベートの充実が仕事に対する意欲につながるといった労働の質の向上、仕事とプライベートの好循環が生まれることも期待されています。

 

メリット3:魅力ある職場づくりにより人材確保・定着

これまでの日本の「働きすぎ」を防ぎながら、「多様で柔軟な働き方」や「ワーク・ライフ・バランス」を推進することにより、職場環境の改善につながり、魅力ある職場づくりの実現が図られるものと期待されています。

このような取り組みを行っていくことで、人材の確保・定着につながり、離職者の逓減も期待され、結果、企業の利益や生産性を高めるものと考えられています。

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3.休息時間(インターバル時間)は何時間に設定すれば良い?

勤務間インターバルは、「前日の終業時刻から翌日の始業時刻の間に一定時間の休息を確保する」ことを言いますが、一定時間の設定に関しては、労働者の通勤時間、交代制勤務等の勤務形態や勤務実態等を十分に考慮し、「仕事と生活の両立が可能な実効性ある休息が確保されるように配慮すること」とされています。

休息時間(インターバル時間)の設定にあたっては、以下の要件を考慮する必要があります。

  • 労働者の生活時間
  • 労働者の睡眠時間
  • 労働者の通勤時間
  • 交代制勤務等の勤務形態や勤務実態

休息時間(インターバル時間)の設定にあたって厚労省は、「望ましい時間数を一律に決めることで各企業の労使の取り組みの工夫を制約してしまってはいけない」とし、次の方法を例示するに留まりました。

そのため、国が指定する休息時間(インターバル時間)はなく、休息時間(インターバル時間)は各企業の設定に委ねられますので、勤務間インターバル制度を導入する場合は、前述した要件などを考慮し、各企業において個別に設定していく必要があります。

  • 例1)8時間、9時間、10時間、11時間、12時間など一律に時間を定める
  • 例2)職種によって時間を定める
  • 例3)義務とする時間数と健康管理のための努力義務とする時間数を分けて設定する

なお、厚生労働省が実施する助成金、「時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)」の対象となる休息時間数(インターバル時間数)は、「9時間以上」となっていますので、助成金を申請する場合は、この辺りも考慮する必要があります。

厚生労働省の「時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)」の詳細はこちら

 

3.1 勤務間インターバル制度に適用除外を設けることはできる?

勤務間インターバル制度については、特別な事情が生じた場合など適用除外とすることが可能です。以下は例示ですので参考にしてください。

  • 重大なクレーム(品質問題・納入不良等)に対する業務
  • 納期の逼迫、取引先の事情による納期前倒しに対応する業務
  • 突発的な設備のトラブルに対応する業務
  • 予算、決算、資金調達等の業務
  • 海外事案の現地時間に対応するための電話会議、テレビ会議
  • 労働基準法第33条の規定に基づき、災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合 など

 

3.2 勤務間インターバル制度に違反したときの罰則は?

勤務間インターバル制度は、現時点(記事投稿日:2019年9月6日)ではあくまで「努力義務」であるため、企業が努力義務に違反したからと言って、何か法律上の罰則が発生するものではありません。

努力義務とは、法律の規定を守るよう努力を促すものであり、強制されるものではないからです。

しかし、これらの定めを守ることによって、従業員の心身の健康を守り安心して働ける会社を築いていけるなどメリットがあれば、企業の選択によって積極的に取り組むのも良いのではないかと思います。

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4.勤務間インターバル制度導入の手順(5ステップ)

勤務間インターバル制度の背景やメリットなどは分かったけど、どうやって導入すればいいかというのが実務上のお悩みかと思います。

以下に勤務間インターバル制度導入までの手順、主な検討項目と留意事項のポイントをまとめましたので、導入の際の参考にしてみてください。

ここでの重要ポイントは、いずれのステップにおいても労使間で話し合いを行いながら進めていくことです。

 

step
1
制度導入の検討

まずは、勤務間インターバル制度導入の目的、及び労使間での話し合いの機会の整備をし、労使間の話し合いを通して自社の労働時間の実態の把握をしていきます。

労使間といっても、中堅規模の企業などでは、人事労務責任者と各部門長との話し合いが中心になってくるかと思います。

 

step
2
実態を踏まえた休息時間確保の制度設計の検討

ステップ1の話し合いによって明らかになった自社の労働時間の実態を基に、制度を設計していきます。

主には、対象者、休息時間数、休息時間が次の勤務時間に及ぶ場合の勤務時間の取り扱い、適用除外、時間管理の方法などです。

 

step
3
試行期間

制度の効果を検証するために、まずはトライアルとして運用します。

 

step
4
検証及び見直し(問題の発掘)

トライアル期間で抽出された問題の洗い出し、必要な見直しを行っていきます。

ステップ2~4を繰り返し行い、問題がなければステップ5に移行します。

 

step
5
本格稼働(制度化)

就業規則等の整備を行い、一定期間の運用後、さらに課題があれば見直しを行います。

 

4.1就業規則の規定モデル(厚生労働省)

厚生労働省が規定モデルとして公開している就業規則の規定例(一例)を記載しました。参考にしてみてください。

 

①休息時間と翌所定労働時間が重複する部分を労働したものとみなす場合

(勤務間インターバル)
第〇条 いかなる場合も、労働者ごとに1日の勤務終了後、次の勤務の開始までに少なくとも〇時間の継続した休息時間を与える。
2.前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合、当該始業時刻から満了時刻までの時間は労働したものとみなす。

 

②休息時間と翌所定労働時間が重複したとき、始業時刻を繰り下げる場合

(勤務間インターバル)
第〇条 いかなる場合も、労働者ごとに1日の勤務終了後、次の勤務の開始までに少なくとも〇時間の継続した休息時間を与える。
2.前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合、翌日の始業時間は、前項の休息時間の満了時刻まで繰り下げる。

 

③災害その他避けることができない場合に対処するため例外を設ける場合

上記①または②の第1項に次の規定を追加します。

但し、災害その他避けることができない場合は、この限りではない。

この他、必要に応じて、勤務間インターバル制度に関する申請手続きや勤務時間の取り扱いなどについて、就業規則等の規定の整備を行う必要があります。

出典:厚生労働省:就業規則規定例

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5.まとめ

2019年4月1日から努力義務として施行された「勤務間インターバル制度」、少しずつ普及されてきているようですが、勤務間インターバル制度が進まない理由のひとつとして、制度の認知度が低いことが挙げられます。

「平成 30 年就労条件総合調査」においては、「勤務間インターバル制度の導入の予定がなく、検討もしていない企業(89.1%)」に対して、その理由別の企業割合をみると、「当該制度を知らなかったため」は 29.9%となっており、「平成 29 年就労条件総合調査」時の「当該制度を知らなかったため」 40.2%よりは改善が図られているものの、まだまだ認知度は低いようです。

勤務間インターバル制度の導入は、労使間の調整や制度設計、制度導入後の運営など、中小企業に負荷がかかることも多いですが、慢性的な睡眠不足が続くような職場においては、企業の体質改善のため導入することも悪くないと思います。今後の動向に期待です。

 

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