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1ヵ月単位の変形労働時間制の就業規則・労使協定記載例|変形期間の所定労働時間・時間外労働はどうなる?

2019年11月7日

変形労働時間制(へんけいろうどうじかんせい)とは、労働時間を月単位・年単位で調整することで、業務の繁忙期・閑散期等により勤務時間が変動しても柔軟に働くことができるように設計された労働時間制度です。

このため、通常の固定労働時間制とは残業代時間の計算なども異なりますが、変形労働時間制を採用した場合でも労働基準法で規定された労働時間を超えた分は残業代として支払う必要があることに注意が必要です。

変形労働時間制は、1週間、1ヵ月、1年単位で設定することができますが、今回は「1ヵ月単位の変形労働時間制」について、簡単に解説していきます。

1.1ヵ月単位の変形労働時間制とは

「1ヵ月単位の変形労働時間制」とは、1ヵ月以内の一定の期間を平均して1習慣の労働時間が法定労働時間を超えない範囲において、1日または1週間の法定労働時間の規制にかかわらず、当該変形労働時間を超えて労働させることができる制度を言います。

※一般の事業場において法定労働時間は、1日8時間、1週40時間となります。(特例措置対象事業場(常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の制作の事業を除く)、保険衛生業、接客娯楽業)は1日8時間、1週44時間を言います。)

今回は、1ヵ月単位の変形労働時間制を取り上げますが、「1年単位の変形労働時間制」「1週間単位の変形労働時間制」を取ることも可能です。会社の状況に合わせて、選択してください。

 

2.1ヵ月単位の変形労働時間制を採用するための要件

1ヵ月単位の変形労働時間制を採用するための要件としては、就業規則または労使協定等により、次の事項について、具体的に定める必要があります。

 

2.1 変形労働時間制を採用する旨の定め

変形労働時間制を採用する旨を、就業規則または労使協定等に定めておく必要があります。

 

2.2 労働日・労働時間の特定

変形期間における各週、各日の労働時間をあらかじめ具体的に定めておく必要があります。

なお、最初に決めた労働時間を途中で変更することはできないため、注意が必要です(昭和63年1月1日基発第1号)。

各日の労働時間は、単に「労働時間は1日8時間とする」という定めだけでなく、変形期間の長さ等についても具体的に定め、かつ、労働者に周知することが必要です。

  • 変形期間の長さ
  • 対象労働者
  • 変形期間内の各日と各週の労働時間(就業規則に記載する場合は始業・終業時刻も定める)
  • 有効期間(労使協定に記載する場合)

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2.3 変形期間の所定労働時間

変形期間の労働時間を平均して1週間の労働時間は法定労働時間を超えてはならないとされているため、変形期間の所定労働時間の合計は、次の計算方法を用いて算出された時間の範囲内とする必要があります。

1週間の法定労働時間×変形期間の暦日数(1ヵ月以内)÷7日(=1週間)

上記計算式により、1ヵ月の法定労働時間の総枠は、次のようになります。

1ヵ月の暦日数 法定労働時間の総枠
31日 177.1時間(194.8時間)
30日 171.4時間(188.5時間)
29日 165.7時間(182.2時間)
28日 160.0時間(176.0時間)

※小数点2位以下は切り捨て。括弧内は、特例措置対象事業場(週44時間)の法定労働時間の総枠となります。

 

2.4 変形期間の起算日

変形期間の起算日(=始期)を明らかにしておく必要があります。

 

3.労使協定及び就業規則に記載すべき事項

変形労働時間制を導入するにあたっては、労使協定および就業規則等にて必要事項を定める必要があります。

 

3.1 労使協定

会社(事業主、使用者)と労働者の間で労使協定を締結する場合は、次の事項について協定し、所轄の労働基準監督署に届出を行う必要があります。

1ヵ月単位の変形労働時間制の定めは、労使協定によるだけでなく、就業規則に規定することでも採用することが可能です。

<1ヵ月の変形労働時間制に関する協定届(記載例)>

出典:東京労働局

 

3.2 就業規則

常時10人以上の労働者を雇用している事業場においては、就業規則の作成が義務とされているため、1ヵ月単位の変形労働制を採用する場合は、就業規則に「1.要件」の要件をすべて記載し、「就業規則(変更)届」を所轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。

常時9人以下の労働者を雇用している事業場においては、労働基準法では就業規則の作成義務がありませんが、会社(事業主、使用者)と労働者との間で労使協定を締結するか、就業規則で定めるべき項目について、書面に記載して規定することにより1ヵ月単位の変形労働時間制を採用することができます。なお、この書面は労働者に周知する必要があります。

就業規則:記載例

就業規則(記載例)

第○条
所定労働時間は、毎月1日を起算日とする1ヵ月単位の変形労働時間制を採用し、1ヵ月を平均して週40時間以内とする。

第○条
1日の所定労働時間は、毎月1日から20日までは7時間、21日から月末までは8時間30分とし、それぞれ、始業・終業時刻は次のとおりとする。但し、業務の都合その他やむを得ない事情により、これらを繰上げ、または繰下げることがある。この場合において業務の都合によるときは、○が前日までに通知する。
1日~20日 始業時刻:9時 終業時刻:17時 (休憩時間は12時から13時)
21日~月末 始業時刻:8時 終業時刻:17時30分(休憩時間は12時から13時)

第○条
休日は、次のとおりとする。
① 毎週日曜日
② 第1~第3土曜日
③ 国民の祝日(日曜日と重なったときは翌日)
④ 年末年始(12月○日~1月○日)
⑤ 夏季休日(8月13日~15日)
⑥ その他会社が指定する日
2. 業務の都合により会社が必要と認める場合は、あらかじめ前項の休日を他の日と振り替えることがある。

 

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4.時間外労働における割増賃金の支払い

労働時間が法定労働時間を超える場合には、その時間は時間外労働となるため、法定労働時間を超える時間について割増賃金を支払うことが必要です。

 

a. 1日の法定労働時間外労働

労使協定または就業規則等で1日8時間を超える時間を定めた日はその時間を超えて、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間

 

b. 1週の法定労働時間外労働

労使協定または就業規則等で1週40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は1週40時間を超えて労働した時間(aで時間外労働となる時間を除く)

 

c. 1ヵ月単位の法定労働時間外労働

対象期間(1ヵ月)の法定労働時間総枠(40時間×暦日数÷7日)を超えて労働した時間(aまたはbで時間外労働となる時間を除く)(昭63.1.1基発1号)

<1ヵ月単位の変形労働時間制における時間外労働の考え方>
(変形期間が1ヵ月(起算日毎月1日)、所定労働時間が月間165時間の場合)

出典:東京労働局

①:1日でみると8時間以内であり、1週間でみても法定の40時間を超えておらず、1ヵ月でも法定労働時間の総枠171.4時間を超えていないため、この週の所定労働時間を超えていても、法定労働時間外労働はなりません。
②:1日の法定労働時間の8時間を超えているため、法定労働時間外労働となります。
③:②の部分を除いて1日8時間、1週40時間、1ヵ月171.4時間を超えていないため、法定労働時間外労働とはなりません。
④:1日8時間を超えていませんが、1週40時間を超えているため、法定労働時間外労働となります。
⑤:所定労働時間(9時間)超えるため、法定労働時間外労働となります。
⑥:1日8時間、1週40時間、1ヵ月171.4時間を超えていないので、法定労働時間外労働とはなりません。
⑦:次の⑧と併せて2時間の労働を所定外に行っていますが、この2時間は1日8時間、1週40時間を超えていないものの、1ヵ月171.4時間を超えています。1ヵ月の実労働時間は165時間に①から⑧までの労働時間を加えた178時間ですが、法定労働時間外労働となる②、④、⑤の5時間を差し引き(178時間-5時間)、173時間と171.4時間を比較し、その差1.6時間が法定時間外労働となります。⑧はこの1.6時間を指しています。2時間から⑧の1.6時間を引いた0.4時間は1ヵ月171.4時間の範囲内となっており、法定時間外労働にはなりません。この部分が⑦となります。

 

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d. 特別の配慮を要する者に対する配慮

1ヵ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的労働時間制により労働者を労働させる場合には、育児を行う者、介護を行う者、職業訓練または教育を受ける者その他特別の配慮を要する者については、これらの者が育児等に必要な時間を確保できるように配慮しなければなりません。

 

6.まとめ

今回は、1ヵ月単位の変形労働時間制について、簡単に解説しました。

その他の労働時間制度については、「固定労働時間制」「フレックスタイム制」「裁量労働制」など様々な種類がありますので、順次、解説していきたいと思います。

世の中では多様な働き方が求められていますが、企業の業種・業態、体質などによって適切な労働時間制度がありますので、自社に合った制度を選んでいきましょう。

 

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