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改正健康増進法|受動喫煙対策義務化2020年4月1日より全面施行!小さな飲食店の経過措置とは?分かりやすく解説!

2018年7月に健康増進法の一部を改正する法律が成立し、望まない受動喫煙をなくすための取り組みがマナーからルールへと変わりました。

改正健康増進法は、2019年7月より順次施行され、2020年4月1日に全面施行となります。

今回は、改正健康増進法による「受動喫煙対策」について、分かりやすく解説します。

1.受動喫煙とは

たばこが健康に悪影響を及ぼすことは多くの方がご存知だと思いますが、喫煙は、肺がんをはじめとする多くのがん、心臓病や脳卒中などの循環器の疾患、喘息や気胸などの呼吸器疾患などにかかるリスクを高めると言われています。また、そのリスクは、たばこを吸わない人へ及ぶこともあります。

喫煙者が吸い込む煙(主流煙)だけでなく、たばこから立ち昇る煙(副流煙)や喫煙者が吐き出す煙にも、ニコチンやタールなど多くの有害物質や発がん性物質が含まれています。

本人は喫煙しなくても、副流煙や喫煙者が吐き出す煙によって、結果的にたばこの煙を吸わされてしまうことを「受動喫煙」と言います。

実は、たばこの有害物質は、主流煙よりも副流煙に多く含まれており、家族に喫煙者がいたり、喫煙可の店内で働いたりするなど、受動喫煙にさらされる機会が多い人は、肺がん、虚血性心疾患、脳卒中、乳幼児突然死症候群にかかるリスクが高くなるなど、健康への悪影響を受けることが分かっています。

 

2.改正健康増進法とは

たばこの受動喫煙の害を防ぐため、受動喫煙対策が努力義務として盛り込まれた「健康増進法」が2002年に制定され、公共交通機関やオフィスなど様々な場所で禁煙や分煙の取り組みが広がっていきました。しかし、当初は努力義務であったため、店舗や施設によって対策はまちまちで、あまり普及しませんでした。

これらの状況が考慮され、2018年(平成30年)7月に健康増進法の一部を改正する法律が成立し、2020年(令和2年)4月1日より全面施行されます。

改正健康増進法は、望まない受動喫煙の防止を図るため、多数の者が利用する施設などの区分に応じ、施設の一定の場所を除き喫煙を禁止するとともに、当該施設等の管理について権原を有する者(管理権限者)が講ずべき措置などについて定めたものです。

これにより、多数の人が利用するすべての施設において、喫煙のためには各種喫煙室の設置が必要となります。

望まない受動喫煙をなくしていくため、健康増進法では次の3つの改正ポイントを置いています。

 

【基本的考え方1】「望まない受動喫煙」をなくす

受動喫煙が他人に与える健康影響と、喫煙者が一定程度いる現状を踏まえ、屋内において、受動喫煙にさらされることを望まない者がそのような状況に置かれることのないようにすることを基本に、「望まない受動喫煙」をなくす。

つまり、「屋内」での喫煙が原則禁止になります。

 

【基本的考え方2】受動喫煙による健康影響が大きい子ども、患者等に特に配慮

受動喫煙による健康影響が大きいことを考慮し、子ども~20歳未満の者、患者などが主たる利用者となる施設や屋外について、受動喫煙対策を一層徹底する。

つまり、子ども~20歳未満の人、患者等が主たる利用者となる学校や病院等の施設では、屋内だけでなく敷地内でも喫煙が原則禁止になります。

 

【基本的考え方3】施設の類型・場所ごとに対策を実施

「望まない受動喫煙」をなくすという観点から、施設の類型・場所ごとに、主たる利用者の違いや、受動喫煙が他人に与える健康影響の程度に応じ、禁煙措置や喫煙場所の特定を行うとともに、掲示の義務付けなどの対策を講ずる。

その際、既存の飲食店のうち経営規模が小さい事業者が運営するものについては、事業継続に配慮し、必要な措置を講ずる。(詳細は、「Point.6 既存の経営規模の小さな飲食店への経過措置(既存特定飲食提供施設の考え方)」にて解説)

つまり、施設の種類、場所ごとに、敷地内禁煙・屋内禁煙にすることや喫煙できる場所に標識を掲示することなどが義務づけられます。

この改正健康増進法により、受動喫煙を防ぐための取り組みが「マナー」から「ルール」へと変わりました。

そして、2020年東京オリンピック・パラリンピックまでに、施設の種類や場所に応じ段階的に施行されていく予定です。

 

<改正健康増進法の体系>

(出典:厚生労働省「なくそう!望まない喫煙」)

※喫煙を主目的とする以下の施設では、施設内で喫煙が可能です。
・喫煙を主目的とするバー、スナック等
・店内で喫煙可能なたばこ販売店
・公衆喫煙所

※但し、喫煙可能部分には、
①喫煙可能な場所である旨の標識の掲示が義務付けとなります。
②来店客・従業員ともに20歳未満は立ち入れません。

 

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3.改正健康増進法10のポイント

2018年(平成30年)7月の改正健康増進法のポイントは、10個あります。

 

Point.1 多くの施設において、原則、屋内禁煙

改正健康増進法により、多数の利用者がいる施設や鉄道、飲食店などの施設においては、原則、屋内禁煙となります。

所定の要件に適合すれば、各種喫煙室(専用室、可能室、加熱式たばこ専用室、目的室)を設置することができます。

全面施行となる2020年4月以降に違反すると、罰則の対象となることもあります。

また、屋外を含めた施設内が原則禁煙となる施設もあり、学校・病院・児童福祉施設、行政機関、バス・航空機などについては、屋内は完全禁煙となり、喫煙室等の設備を設けることもできません。

但し、施設の屋外には、受動喫煙を防止するために必要な措置が取られた場所に限り、喫煙場所(特定屋外喫煙場所)を設置することができます。

 

Point.2 屋内における各種喫煙室の設置

Point.1 但し書きのとおり、改正健康増進法では、施設における事業内容や経営規模への配慮から、各類型・場所ごとに、各種喫煙室の設置が認められています。

各喫煙室は、それぞれ設置可能となる条件が異なり、喫煙が可能となる4タイプの喫煙室については、それぞれ以下のとおりです。

 

<喫煙室4タイプ>

(出典:厚生労働省「なくそう!望まない喫煙」)

※いずれの喫煙室に関しても 20 歳未満の者の立ち入りは禁止です。

 

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Point.3 20歳未満の者の喫煙エリアへの立入禁止

20歳未満の者は、たとえ喫煙を目的としない場合であっても、喫煙エリア(屋内、屋外を含めたすべての喫煙室、喫煙設備)への立ち入りは一切禁止となります。

たとえ従業員であっても、20歳未満の者は立ち入ることができません。

万一、20歳未満の者を喫煙エリアに立ち入らせた場合は、施設の管理者(管理権限者)は、指導・助言の対象になります。

指導・助言にに従わない場合等には、義務違反の内容に応じて勧告・命令等の対象となり、さらに改善が見られない場合に限って、罰則(過料)が適用されることになります。(詳細は、「Point.8 義務違反時の指導・命令・罰則の適用」にて解説)

(出典:厚生労働省「なくそう!望まない喫煙」)

 

Point.4 たばこの煙の流出防止にかかる技術的基準

屋内施設に喫煙をすることができる場所を設ける際には、「健康康増進法施行規則等の一部を改正する省令」において定められた、次の技術的な基準を満たさなければなりません。

  1. 出入口において室外から室内に流入する空気の気流が0.2m毎秒以上であること
  2. たばこの煙(蒸気を含む。以下同じ)が室内から室外に流出しないよう、壁、天井等によって区画されていること
  3. たばこの煙が屋外または外部に排気されていること
  • ※1 施設内が複数階に分かれている場合は、上記の基準に代えて、壁、天井等で区画した上で、喫煙階と禁煙階を分ける取り扱いも可能とする
  • ※2 改正法附則第2条第2項に規定する既存特定飲食提供施設(改正法の施行の際、現に存在している飲食店等をいう。以下同じ)では、店舗内の全体の場所を喫煙可能室とする場合の技術的基準は、壁、天井等によって区画されていることとする
  • ※3 施行時点に既に存在している建築物等であって、管理権原者の責めに帰することができない事由によって上記基準を満たすことが困難な場合にあっては、たばこの流出防止にかかる技術的基準について一定の経過措置を設ける
    第二種施設等または喫煙目的施設(この省令の施行の際現に存する建築物または旅客運送事業鉄道等車両等に所在するものに限る。)の屋内または内部の場所に喫煙をすることができる場所(以下、本項において「喫煙場所」という)を定めようとする場合であって、当該第二種施設等または当該喫煙目的施設の管理権原者の責めに帰することができない事由によって当該場所において第二条の規定による改正後の健康増進法施行規則第十六条第一項若しくは第十八条第一項またはこの省令附則第二条第一項若しくは前条第一項に規定する技術的基準(以下、本項において「一般的基準」という)を満たすことが困難であるものに係る技術的基準については、これらの規定にかかわらず、当該喫煙場所において、たばこの煙を十分に浄化し室外に排気するために必要な措置を講ずることにより、一般的基準(上記の1~3)に適合した措置を講じた場合と同等程度にたばこの煙の流出を防止することができることとする

 

Point.5 喫煙室への標識の掲示義務

改正健康増進法では、喫煙可能な設備を持った施設には、必ず指定された標識を掲示することが義務づけらました。

例えば、施設内に喫煙室がある場合には「施設の出入口となる場所」と「喫煙室の出入口」に施設の種類に応じた標識(ステッカー、プレート等)を掲示するなどです。

紛らわしい標識の掲示、標識の汚損等については禁止されており、罰則の対象となります。

 

(1)施設内の各種喫煙室の標識

各種喫煙室には、設備に応じて次の標識の掲示が必要となります。

(出典:厚生労働省「なくそう!望まない喫煙」)

 

(2)施設に喫煙室があることを示す各標識

各種喫煙室を設置した施設には、設備に応じて次の標識の掲示が必要となります。

(出典:厚生労働省「なくそう!望まない喫煙」)

 

(3)喫煙室タイプ+各種喫煙室の標識一覧

(出典:政府広報オンライン)

 

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Point.6 既存の経営規模の小さな飲食店への経過措置(既存特定飲食提供施設の考え方)

既存の経営規模の小さな飲食店については、事業継続に影響を与えることが考えられることから、経過措置として喫煙可能室の設置が可能とされています。

この条件を満たすための既存特定飲食提供施設については、次のように定められています。

 

条件1:既存事業者であること

  • 2020年(令和2年)4月1日時点で、営業している飲食店であること

但し、改正健康増進法施行後に何らかの状況の変更があった場合に、引き続き「既存の飲食店」に該当するかどうかは、

  • ①事業の継続性
  • ②経営主体の同一性
  • ③店舗の同一性

などを踏まえて総合的に判断されます。

 

条件2:資本金の額

  • 資本金5,000万円以下であること(中小企業基本法における定義)。

※大規模会社が発行済株式の総数の2分の1以上を有する場合などを除く。

 

条件3:面積

  • 客席面積100㎡以下であること

上記3つの条件をいずれも満たしている事業者の該当施設に限り、既存特定飲食提供施設として、喫煙可能室の設置を選択することができます。

 

Point.7 喫煙室のある施設における従業員への対策

改正健康増進法では、各施設の管理者に対し、従業員の受動喫煙を防止するための措置を講ずること努力義務とされました。

また、労働安全衛生法において、事業者に対して屋内における労働者の受動喫煙を防止するための努力義務が課されています。

厚生労働省が策定した、改正健康増進法で義務付けられる事項と労働安全衛生法の努力義務により事業者が実施すべき事項をまとめたガイドラインを参考に、受動喫煙対策を進めていきましょう。

職場における受動喫煙防止のためのガイドライン

 

Point.8 義務違反時の指導・命令・罰則の適用

改正健康増進法により、違反者には、罰則の適用(過料)が課せられることがあります。

改正健康増進法における過料とは、秩序罰としての過料であり、法律秩序を維持するために、法令違反者に制裁として科せられるものです。

また、過料の金額については、都道府県知事等の通知に基づき、地方裁判所の裁判手続きにより決定されます。

 

<義務違反時の指導・命令・罰則一覧>

(出典:厚生労働省「なくそう!望まない喫煙」)

※喫煙を発見した場合、違反者に対しては、指導がなされます。
その上で、繰り返し指導されてもなお喫煙を続けるなど、改善が見られない場合に、命令がなされます。

 

<義務違反時の対応>

(出典:厚生労働省)

 

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Point.9 事業者への財政・税制支援等

事業者が受動喫煙対策を行う際の支援策として、各種喫煙室の設置等にかかる財政・税制上の制度が整備されています。

 

受動喫煙防止対策助成金(財政支援)

財政支援である「受動喫煙防止対策助成金」は、中小企業の事業主が受動喫煙防止対策を実施するために必要な経費のうち、一定の基準を満たす各種喫煙室等の設置などにかかる工費、設備費、備品費、機械装置費などの経費に対して助成を行う制度です。

 

特別償却または税額控除制度(税制措置)

税制措置である「特別償却または税額控除制度」は、2021年3月31日までに、認定経営革新等支援機関等(商工会議所等)による経営改善に関する指導に基づいて一定の要件を満たした経営改善設備の取得を行った場合に、取得価額の特別償却(30%)または税額控除(7%)の適用が認められるものです。

 

Point.10 全面施行スケジュール

各種施設等の類型・場所に応じ、施行に必要な準備期間を考慮して、2020年東京オリンピック・パラリンピックまでに段階的に施行されています。

2019年7月1日より「学校・病院・児童福祉施設等・行政機関の庁舎等」では、原則として敷地内が禁煙に、2020年4月1日からは全面施行となり、学校・病院・児童福祉施設等・行政機関の庁舎等以外の多数の人が利用するすべての施設が原則、屋内禁煙となります。

 

<全面施行スケジュール>

(出典:厚生労働省「なくそう!望まない喫煙」)

 

2019年7月1日~

学校・病院・児童福祉施設等・行政機関の庁舎等において「敷地内禁煙」になりました。

但し、屋外で受動喫煙を防止する必要な措置が取られた場所に、喫煙所を設置した場合は、その中でのみ喫煙することができます。

 

2020年4月1日~

飲食店やオフィス、事業所、交通機関など、上記以外のすべての施設が「原則、屋内禁煙」になります。

但し、喫煙ブースなどの喫煙専用室・指定たばこ(加熱式たばこ)専用喫煙室を設置した場合、その室内でのみ喫煙することができます。

 

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4.まとめ

受動喫煙対策は、たばこを吸わない人が望まない受動喫煙にさらされてしまうという問題を解決するための取り組みです。

改正健康増進法の施行により「マナーからルール」に変り、義務が守られない場合は罰則の規定も設けられました。

これらの新たなルールによって、受動喫煙対策が進むことが期待されています。

たばこを吸う人もたばこを吸わない人も、それぞれがお互いの立場を尊重し、気持ちよく過ごせる環境をつくっていくことが大切ですね。

 

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