年金制度改正法|被用者保険(短時間労働者)への適用拡大!2022年10月~100人超規模企業まで適用

2020年(令和2年)5月29日の第201回通常国会において「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(年金制度改正法)」が成立し、同年6月5日に公布されました。

「年金制度改正法」は、より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたり多様な形で働くようになることが見込まれる中で、今後の社会・経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図ることを目的に改正されました。

今回の「年金制度改正法」においては、①被用者保険(短時間労働者)への適用拡大、②在職定時改定の導入・在職老齢年金制度の見直し、③受給開始時期の選択肢の拡大、④確定拠出年金の加入可能要件の見直し等が行われています。

今回は、「被用者保険(短時間労働者)への適用拡大」について、分かりやすく簡単に解説していきます。

年金制度改正法の変遷

今回の「年金制度改正法」においては、働きたい人が働きやすい環境を整えるとともに、短時間労働者について年金等の保障を厚くする観点から、被用者保険(年金・医療)への適用拡大が実施されました。

参考までに、これまでの年金制度改正の変遷についてまとめています。適用条件は混同しやすいので、しっかりと押さえておきましょう。

2016年(平成28年)9月30日まで

  • 所定労働時間が「週30時間以上」である方

2016年(平成28年)10月1日より

  • 所定労働時間が「週30時間以上」である方、または下記のすべてを満たしている方
    ①所定労働時間が「週20時間以上」
    ②月額賃金8.8万円以上(年収換算で約106万円以上)
    ③勤務期間1年以上見込み
    ④学生は適用除外
    ⑤従業員規模500人超の企業等

2017年(平成29年)4月1日より

  • 上記①~④の条件の下、従業員規模500人以下の企業について
    ・民間企業は、労使合意に基づき、企業単位で、短時間労働者への適用拡大を可能とする
    ・国・地方公共団体は、規模にかかわらず適用とする

2020年(令和2年)改正より

  • 上記③勤務期間1年以上見込みは、実務上の取り扱いの現状を踏まえて撤廃
    2022年(令和4年)10月~:フルタイムの被保険者と同様の2ヵ月超の要件を適用
  • 上記⑤従業員規模500人超の企業等:50人超規模の企業まで適用範囲を拡大する
    2022年(令和4年)10月~:100人超規模の企業まで適用
    2024年(令和6年)10月~:50人超規模の企業まで適用
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被用者保険(短時間労働者)への適用拡大

2020年(令和2年)6月5日に公布された「年金制度改正法」の企業規模要件、労働時間要件、賃金要件、勤務期間要件、学生除外要件は、以下のとおりです。

①企業規模要件

上記の変遷のとおり、今回の「年金制度改正法」では50人超規模の企業まで適用スケジュールが明記され、2022年(令和4年)10月より100人超規模の企業まで適用、2024年(令和6年)10月より50人超規模の企業まで適用されることになります。

a. 適用従業員数

  • 2022年(令和4年)10月~:100人超規模の企業まで適用
  • 2024年(令和6年)10月~:50人超規模の企業まで適用

企業規模要件の「従業員数」は、適用拡大以前の通常の被保険者の人数を指し、それ以外の短時間労働者を含みません。

  • フルタイムの労働者
  • 週労働時間が通常の労働者の4分の3以上の短時間労働者(=適用拡大以前の通常の被保険者)

企業規模要件:従業員数

(出典:厚生労働省)

b. 適用対象期間

月ごとに従業員数をカウントし、直近12ヵ月のうち6ヵ月で基準を上回った場合、適用対象となります。

一度適用対象となった場合、従業員数が基準を下回っても引き続き適用となります。

但し、被保険者の4分の3の同意で対象外となることができます。

c. 適用事業所単位

従業員数のカウントは、法人であれば同一の法人番号を有する全事業所単位、個人事業主であれば個々の事業所単位で行います。

②労働時間要件

  • 所定労働時間:週20時間以上

労働時間要件(週20時間)については、まずは週20時間以上労働者への適用を優先するため、現状維持となります。

週20時間の判定は、基本的に契約上の所定労働時間によって行うため、臨時に生じた残業等は含みません。

※ 現行の運用では、実労働時間が2ヵ月連続で週20時間以上となり、なお引き続くと見込まれる場合には、3ヵ月目から保険加入となっています。

③賃金要件

  • 月額賃金88,000円以上(年収換算で約106万円以上)

賃金要件(月額賃金88,000円)については、最低賃金の水準との関係も踏まえて、現状維持となります。

月額賃金88,000円の判定は、基本給及び諸手当によって行います。但し、残業代・賞与・臨時的な賃金等は含みません。

判定基準に含まれないものの例

  • 臨時に支払われる賃金 (結婚手当等)
  • 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金 (賞与等)
  • 時間外労働に対して支払われる賃金 、休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)
  • 最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)

4. 勤務期間要件

  • 2022年(令和4年)10月~:フルタイムの被保険者と同様の2ヵ月超の要件を適用

勤務期間要件(1年以上)については、実務上の取り扱いの現状も踏まえて撤廃し、フルタイム等の被保険者と同様の2ヵ月超の要件が適用されます。

現行制度の運用上、実際の勤務期間にかかわらず、基本的に以下のいずれかに当てはまれば1年以上見込みと扱うことになっています。

  • 就業規則、雇用契約書等その他書面において契約が更新される旨又は更新される場合がある旨が明示されていること
  • 同一の事業所において同様の雇用契約に基づき雇用されている者が更新等により1年以上雇用された実績があること
    →適用除外となるのは、契約期間が1年未満で、書面上更新可能性を示す記載がなく、更新の前例もない場合に限られています

5. 学生除外要件

  • 学生:適用除外

学生除外要件については、本格的就労の準備期間としての学生の位置づけ等も考慮し、現状維持となります。

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(出典:厚生労働省)

士業の法人化について

(出典:厚生労働省)

 

健康保険の適用拡大

健康保険についても、被用者保険として、厚生年金保険と一体として適用拡大されることになりました。

また、厚生年金・健康保険の適用対象である国・自治体等で勤務する短時間労働者に対して、公務員共済の短期給付(医療保険)が適されます。

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まとめ

「年金制度改正法」における「被用者保険(短時間労働者)への適用拡大」は、2022年(令和4年)10月~適用開始となります。

被用者保険の保険料は労使折半であるため、被用者保険の適用範囲が拡大することにより、従業員にとっては、国民健康保険より手厚い厚生年金による保障(報酬比例の上乗せ給付)や健康保険による保障(病気や出産に対する傷病手当金や出産手当金の支給)が受けられるようになります。

反面、会社側の負担増ともなり得るものですので、コロナ時代を乗り越えていくため、より一層、しっかりとした経営基盤を築いていくことも求められます。

人事労務コンサル ALL HR


 

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サプラボ編集部

サプラボ編集部★社会保険労務士・人事労務コンサルタント・キャリアコンサルタントを中心とする人事労務情報を得意とするライター集団|ビジネスを加速する中小企業の人事労務情報に関する記事を読者目線で掲載しています。

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