退職金制度|中小企業退職金共済制度とは?4種類の退職金制度についても簡単解説!

企業で働く従業員にって、企業を選ぶ必要な福利厚生のひとつとして「退職金制度」があります。

退職金制度は、一般的には定年退職を迎えた従業員に退職金を支給する制度を言いますが、法律で定められている制度ではなく、企業が独自で設ける制度であるため、いくつかの種類があります。

今回は、いくつかの種類の中でも、特に中小企業が多く採用している退職金制度である「中小企業退職金共済制度」の概要について、分かりやすく簡単に解説していきます。

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中小企業退職金共済制度

昭和34年に国の中小企業対策の一環として制定された「中小企業退職金共済法」により、「中小企業退職金共済制度」が設けられています。

「中小企業退職金共済制度」は、中小企業者の相互扶助の精神と組任の援助で退職制度を確立し、これにより中小企業の従業員の福祉の増進と雇用の安定を図り、ひいては中小企業の振興と発展に寄与することを目的として、独立行政法人勤労者退職金共済機構  中小企業退職金共済事業本部が運営しています。

中小企業退職金共済制度加入者

(出典:厚生労働省)

「中小企業退職金共済制度」の内容について解説する前に、そもそも企業の「退職金制度」にはどんな種類があるのかを次でまとめています。

4種類の退職金制度

企業が実施している退職金制度は、主に次の4種類があります。

退職一時金制度

企業が独自に積み立てた退職金を、退職時に、退職一時金(一括払い)として支給する制度です。

勤続年数や役職に応じて積立額が加算される制度などが一般的であるため、会社への貢献度に応じた退職金を支給することができることがメリットです。
反面、現金での積み立てを行うため、積立金が課税されてしまうことや、資金に余裕がない中小企業では導入できないことなどがデメリットです。

中小企業退職金共済

自社単独では退職金制度を設けることが難しい中小企業が多く利用している退職金制度です。

メリットは、従業員ごとに掛金を設定するこごができ、掛金は損金として全額非課税になります。
また、中小企業であっても退職時には一定の金額の退職金を保障することができ、福利厚生制度が充実している企業として従業員満足度も向上します。

確定給付企業年金制度(DB)

企業が単独または共同して運営する年金制度で、確定した退職金が給付されます。

生命保険会社・信託会社等の外部機関で積み立てをする「基金型」と、母体企業とは別の法人格を持った基金を設立して積み立てを行う「規約型」の2種類があります。

確定給付企業年金制度は、税制上、掛金を損金扱いにすることができるのがメリットです。

但し、運用の失敗等により、企業がその不足額を補填しなければならないというデメリットもあります。

確定拠出年金制度(企業型DC)

確定拠出企業年金制度(「企業型DC」と言います)は、企業が毎月掛け金を積み立てて、従業員自ら年金資金を運用する制度です。

確定給付企業年金制度が企業自らが運用する制度であるのに対し、確定拠出企業年金制度は従業員自らが運用します。

万一、運用の失敗等によって損失が発生した場合でも、企業がその補填の責任を負う必要がないのがメリットです。その他、企業及び従業員双方が社会保険料等の節税効果を得ることもできます。

デメリットは、従業員が運用を行うため、金融に詳しくない従業員等は加入しないという選択をしてしまい、退職金制度として浸透しないことなどが考えられます。

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加入できる企業

中小企業退職金共済制度に加入できる企業は、常時雇用する従業員数または資本金の額・出資の総額のいずれかが、次の範囲内であることが必要です。

  • 一般業種(製造・建設業等)
    常用従業員数300人以下または資本金・出資金3億円以下
  • 卸売業
    常用従業員数100人以下または資本金・出資金1億円以下
  • サービス業
    常用従業員数100人以下または資本金・出資金1億円以下
  • 小売業
    常用従業員数50人以下または資本金・出資金5千万円以下

加入できる中小企業

(出典:厚生労働省)

但し、個人企業や公益法人等の場合は、常時雇用する従業員数によります。

常時雇用する従業員とは?

1週間の所定労働時間が同じ企業に雇用されている通常の従業員と概ね同等である者であって、
①雇用期間の定めのない者
②雇用期間が2ヵ月を超えて雇用される者を含みます。

なお、同居の親族(家族従業員)も加入することができます。

また、中小企業退職金共済加入後、従業員の増加等により中小企業者でなくなった場合、一定の要件を備えていれば、確定給付企業年金制度(DB)、確定拠出年金制度(企業型DC)または特定退職金共済事業に解約手当金相当額の範囲内の金額を引き継ぐことができます。

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加入できる従業員

従業員は原則として全員加入させる必要があります。但し、次の条件にあてはまる従業員は加入させなくても良いことになっています。

  • ①期間を定めて雇用される者
  • ②季節的業務に雇用される者
  • ③試みの雇用期間中の者
  • ④短時間労働者
  • ⑤休職期間中の者
  • ⑥定年などで短期間内に退職することが明らかな者

従業員とは、事業主との間に使用従属関係があり、かつ、賃金の支払いを受けている者をいいます。

 

サプラボ編集部

2018/11/15

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プライバシーポリシー(個人情報保護方針) ディミー株式会社(以下「当社」)は、以下のとおり個人情報保護方針を定め、個人情報保護の仕組みを構築し、 全従業員に個人情報保護の重要性の認識と取組みを徹底させることにより、個人情報の保護を推進いたします。 個人情報の管理 当社は、ユーザーの個人情報を正確かつ最新の状態に保ち、個人情報への不正アクセス・紛失・破損・改ざん・漏洩などを防止するため、セキュリティシステムの維持・管理体制の整備・社員教育の徹底等の必要な措置を講じ、安全対策を実施し個人情報の厳重な管理を行い ...

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掛金月額

掛金月額は、5,000円~30,000円の範囲で、次の種類から従業員ごとに選択することができます。

  • 掛金月額
    5,000円、6,000円、7,000円、8,000円、9,000円、10,000円、12,000円、14,000円、16,000円、18,000円、20,000円、22,000円、24,000円、26,000円、28,000円、30,000円

また、短時間労働者(1週間の所定労働時間が同じ企業に雇用される通常の従業員よりも短く、かつ、30時間未満である従業員を言います)は、上記16種類の掛金月額の他に、次の3種類の特例掛金月額も選択することができます。

  • 特例掛金月額
    2,000円、3,000円、4,000円

なお、掛金は全額事業主が負担します。いかなる場合でも、従業員に負担させることはできません。

 

退職金

退職金は、基本退職金と付加退職金の2本建てで、両方を合算したものが受け取る退職金額となります。

退職金=基本退職金+付加退職金

基本退職金」とは、掛金月額と掛金納付月数に応じて法令で定められている金額で、制度全体として予定運用利回りを1%として設計し定められた金額を言います。

付加退職金」とは、運用利回りが予定運用利回りを上回った場合、これを基本退職金に上積みするもので、運用収入の状況等に応じて定められる金額を言います。

具体的には、掛金納付月数の43ヵ月目とその後12ヵ月ごとの基本退職金相当額に、厚生労働大臣が定めるその年度の支給率を乗じて得た額を、退職時まで累計した総額です。

退職金の支払方法は、退職時に「一時金払い(一括払い)」で支払われます。

なお、退職日に60歳以上で下表の条件を満たせば、5年間または10年間で支払う「全額分割払い」、「一部分割払い(併用払い)」を選択することもできます。

中小企業退職金共済制度退職金

(出典:厚生労働省)

分割支払方法は、年4回(2月・5月・8月・11月)払いとなります。

また、分割支払額は、1回あたり分割払対象額×分割支給率です(初回に設定された額は、支払完了まで変更されません)。

退職金の受給権者は、退職した従業員です。従業員の死亡による退職の場合は、その遺族が受給権者となります。

また、中退共制度から支払う退職金は税法上、一時金払いの場合は退職所得、分割払いの場合は公的年金等控除の対象となる雑所得として取り扱われます。

 

加入手続き

中小企業退職金共済に加入するための手続きのステップは、次のとおりです。

step
1
加入申し込み

初めて中小企業退職金共済に加入申込みする場合は、「新規申込書」に必要事項を記入・押印し、「加入に際してのご確認」に同意のうえ署名をします。

※過去勤務期間通算制度を利用する場合は「通算申出欄」に記入する必要があります。

step
2
預金口座の確認

掛金を納付する金融機関で、「新規申込書」とセットになっている「預金口座振替依頼書(届出書)」に預金口座の確認印を受けます。

毎月の掛金は「当月振替」と「翌月振替」があります。
【例】4月分の掛金:「当月振替」→ 4月18日振替/「翌月振替」→ 5月18日振替

step
3
書類の提出

「新規申込書」を金融機関、委託事業主団体または委託保険会社に提出します。

加入後、従業員を採用した場合など新たに従業員を加入させる場合は、「追加申込書」を加入申込先に都度提出する必要があります。

※「新規申込書」は)中小企業退職金共済事業本部、金融機関または委託事業主団体等に請求します。

 

モデル退職金(東京都)

東京都における退職一時金のモデルをご紹介します。

勤続年数ごとに、自己都合退職と会社都合退職の場合の退職金額が掲載されています。

東京都モデル退職金(退職一時金のみ)

(出典:厚生労働省)

【お問い合わせ先】

独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部
〒170-8055 東京都豊島区東池袋1-24-1
TEL:03-6907-1234 FAX:03-5955-8211

 

まとめ

今回は、数ある「退職金制度」のうち、特に中小企業が多く採用している退職金制度である「中小企業退職金共済制度」について取り上げました。

企業に定年まで勤めてくれた従業員への貢献に感謝し、より良い老後を過ごしてもらうためにも、退職金制度の活用は意義があるものです。

このコロナ禍を乗り切るため、今までの様々な人事制度や福利厚生制度の見直しを行っていかなければならない時期に入っていますので、この機会に改めて検討していくことも必要です。

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